空き家を活用したい!解体する?そのままにする?それぞれのメリット・デメリット

近年、日本では増加していく空き家の問題が深刻化しています。
誰も済んでいない老朽化の進んだ空き家は、様々なトラブルを引き起こしかねません。犯罪の増加、景観の悪化、衛生面への影響など。所有者のみならず、近隣に住む人々にも被害を及ぼしかねません。

あなたは誰も住まなくなってから久しく、放置したままの空き家をお持ちでないですか?
「空き家を取り壊すのには費用がかかるし、土地だけ持っていると邪魔だし…」とお悩みの方。空き家やその土地を貸す・売るという活用を考えたことはありますか?
空き家をそのまま売ったり、更地にしてから土地を貸したり…空き家の活用は様々。
売ったり貸したりすることで空き家の管理等の問題が解消できるばかりでなく、一時的もしくは継続的に収入を得ることができるのです。

今回は空き家の様々な活用法と、メリット・デメリットについてご紹介いたします。

増加していく空き家の問題

近年、人の手で管理をされていない空き家は増加の一途をたどっており、空き家によって発生するトラブルが後を絶ちません。
なぜ空き家は増えていってしまうのでしょう。その理由は、住宅を取り壊した際に跳ね上がる土地の固定資産税であったり、所有者の高齢化により、施設等への入居が増えたことによって住人がいなくなってしまう影響であったり、所有者により様々です。

このままのペースで増えると、いずれ住宅の1/3は空き家になる

現在国内に存在する空き家は約800万戸にものぼると言われていますが、一方で、新築住宅の建築ペースは年90万戸とされています。このままのペースで空き家が増えていくと、20年後には国内に建つ住宅のうち、3軒に1軒は空き家という状態になってしまいます
海外に比べ、日本には住宅を建てられる土地がそう多くはありません。空き家がこのままのペースで増加していけば、空き家に埋め尽くされたぶんだけ、新築を建てられる土地が減っていってしまうことでしょう。

老朽化した空き家を放置することで生まれる問題

「空き家があるのが、そんなに悪いこと?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、その考えはとても危険です!
空き家は、空き巣や放火、不法侵入などの犯罪を誘発するほか、地域の景観を悪くさせたり、害虫・害獣などの発生の温床となり、衛生面の被害ももたらします。
たかだか一軒の空き家と思うなかれ!空き家はその地域を衰退させていく存在なのです。

空き家の増加から破綻していった街、デトロイト

アメリカはミシガン州に存在する、デトロイト市。かつて自動車製造の中心地であり、栄えていたこの街の現在の様子をご存知でしょうか。

1960年から1970年にかけて栄えていたこの街は、1980年代の自動車工業不振により人口が大幅に減少。その影響により、街には空き家や廃墟が次々に増えていき、そのうちにゴーストタウンと化してしまいました。
そして現在、デトロイト市内の3割が空き地、7万棟が空き家という状況に陥っています。

空き家や廃墟だらけになると、犯罪が著しく増加していきます。
デトロイト市では、街に人が少なくなったことで建物内の侵入が容易になったために、麻薬の売買や殺人事件などが増加していきました。一目につかず、犯罪の起こる頻度に対して警官の人数が少なすぎるため、デトロイト市で起きた事件の7割は、いまだに未解決であるといわれています。

デトロイト市の空き家問題について、詳しくはこちらの記事で紹介しています。
空き家の数だけ犯罪は増える!?ミシガン州デトロイトに習う空き家の恐ろしさ

日本も他人事じゃない!街のゴーストタウン化

この現象は、日本においても起こりえないことではありません。現在日本でも空き家の存在が引き金となり発生した犯罪は増加の傾向にあります。
例えば、空き家は建材が老朽化しているために燃えやすく、また目撃されることが少ないため、放火犯に狙われやすい物件になってしまいます。現在でも、空き家の放火から大規模な火災が引き起こされるという事件は少なくありません。

空き家が犯罪の温床となってしまうその前に、空き家を空き家のまま放置するのではなく、その後の活用法を考える必要があるのです。

空き家を解体せずに貸す・売る

空き家の取り壊しに抵抗がある方や、解体工事に要する費用や労力をかけたくないという方。空き家を解体せず、そのまま残していても、貸し出したり売却したりといった活用は可能です。

空き家を賃貸物件として貸し出す

空き家を売却せず、賃貸物件として貸し出すことで、家屋を取り壊すことも、手放すこともせずに済みます。
ここ最近では古民家ブームが到来していることもあり、味のある古い空き家をおしゃれに活用したい、という借主の方は多く存在するはずです。

空き家を賃貸にするメリット

  • 家を所有したままでいられる
  • いずれまた住むこともできる
  • 入居者がつくことで、継続的な収入を得られる
  • まずメリットとして大きいのが、「家を貸し出しているだけなので、所有権は自分にある」という点です。
    例えば、子供時代に住んでいたお家を、両親が亡くなったあとに相続していた場合など。ご自身は別の場所に現在住んでいるけれど、思い出の多い家を手放したくない…ということもあるでしょう。賃貸物件として貸していれば、ご自身の所有家屋でありながら、家の管理自体は借主である住人に任せることができます。

    また、入居者がいる場合は毎月家賃として収入を得ることができますから、そのまま放置していた場合よりも金銭的なメリットが見込めます。

    空き家を賃貸にするデメリット

  • 入居者がいなければ収入が得られない
  • 入居者が付くようある程度の修繕が必要
  • 入居者との間にトラブルが起きる可能性もある
  • 空き家を賃貸物件にしたとしても、入居者が付かない限り現状は空き家と変わらないため、収入を得ることはできません。
    また、入居者が付きやすいようにするためには、古いまま、汚いままにしておくわけにはいきませんので、ある程度の修繕を施す必要があります。

    入居者が付いた場合でも、所有している家屋である限り、問題が起こった場合にはご自身も責任の火の粉をかぶることになるでしょう。
    例えば、入居者同士が所有家屋で問題を起こした場合、ご自身も無関係ではいられないでしょうし、また、入居者と貸主であるご自身の間にも、家賃滞納や原状回復についてなど、トラブルが起きることも少なくありません。

    空き家を売却する

    空き家を解体せず、そのまま売却するという方法もあります。
    賃貸の場合は家屋もご自身の所有物のままでしたが、空き家を売却した場合、空き家の建つ土地の所有権のみがご自身のもとに残り、空き家自体の所有権は買い手の方に譲ることになります。

    空き家を売却するメリット

  • 空き家の解体費用がかからない
  • 買い手がつくことで、一時的な収入が得られる
  • 特別控除の特例を受けられる可能性がある
  • 空き家を譲渡すると、3,000万円の特別控除が受けられる!?

    一定の条件を満たした空き家は、売買の際に、譲渡所得税特別控除の特例を受けることができます。この特例は、放置され管理されなくなった空き家の増加を防ぐため、空き家の売買を活発にしていくことを目的として、平成28年4月1日から平成31年12月31日の間の売却を対象として、平成28年に施工されました。

    空き家売却の際の特別控除について、詳しくはこちらの記事でご紹介しています。

    相続した空き家の土地を売却すると、3,000万円の特別控除が適用される!?

    空き家を売却するデメリット

  • なかなか買い手がつきにくい
  • 買い手がつくまでの管理が大変
  • 高い価格で売れるとは限らない
  • 空き家を賃貸物件とした場合にも言えることですが、買い手がつかなければその物件は空き家のまま。
    昨今全国に空き家が増加してしまっている影響で、空き家売買の需要と供給のバランスが崩れてしまい、供給過多になってしまっていることもあり、売りたくても買い手がなかなかつかなかったり、買い手はついたとしても、空き家の供給過多による価格の低下により、安くしか売れないということもあります。

    空き家を解体して、土地を貸す・売る

    さて、ここまで空き家を解体せずに売却・貸与する場合についてお話してきましたが、空き家を解体し、更地の状態にしてから売ったり、貸したりする手もあります。
    つまり、土地の売却・貸与を行う活用方法です。これには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

    更地にして、土地を貸し出す

    それではまず、空き家の解体工事を行い、更地の状態にしてから土地を貸し出す場合から見ていきましょう。

    土地を貸し出すメリット

  • 土地にかかる固定資産税が安くなる
  • 借主が付けば継続的な収入が得られる
  • 土地にかかる固定資産税は、住宅が建っていると住宅用地とみなされ、固定資産税の軽減措置が適用され、更地の状態よりも1/6の額となります。
    土地を貸し出し、利用者がそこに住宅を建てることで、その土地は再び住宅用地となりますので、更地の状態よりも固定資産税が安くなります。

    また、毎月支払われる地代や、契約更新の際に発生する更新料等で、継続的な収入を得ることもできます。

    土地を貸し出すデメリット

  • 事業としての収益性が低い
  • 借主との間にトラブルが発生しやすい
  • 定期的な収入が見込めるとはいえ、土地を貸すことを事業として考えると、収益性に乏しいことは間違いありません。簡単に計算してみると、単純利回りはおよそ1.2%ほど。もちろんマイナスとなることはありませんが、それほど高い利益は期待できません。

    また、借主との間に地代の値下げ交渉や、土地の又貸しなどの契約に違反した行動なども考えられ、トラブルの発生も心配されます。

    更地にして、土地を売却する

    続いては、空き家を取り壊し、更地の状態にしてから土地を売却する場合です。

    土地を売却するメリット

  • 土地の管理をしなくてよくなる
  • 空き家のある土地よりも買い手がつきやすい
  • 空き家をそのまま売却する際のデメリットとして、「買い手がつきにくい」ということを取り上げましたが、その理由の多くは、どうせ住むなら新築に住みたいという人のほうが多いためなのです。
    つまり、古い家屋がついている土地よりも、新たに新築を建てることのできる土地のほうが一般的な需要は高く、買い手がつきやすいということですね。

    土地を売却するデメリット

  • 土地の所有権がなくなってしまう
  • 空き家の解体費用がかかる
  • 売却・貸与にかかわらず、共通して言えるのが「更地にして活用するためには、初期費用として解体工事費用を負担する必要がある」ということ。
    また、売却するとなるとその土地の所有権はご自身の手元からなくなってしまいます。ご自身が相続した土地でありながら、もう自分のもとに戻ることはないということを踏まえ、本当に手放してもいい土地なのかをよく考えてから売却する必要があります。

    まとめ

    空き家はそのまま放置しておくと、治安の悪化・倒壊や破損の危険性などもあり、周囲に住む方々に悪影響を及ぼしてしまうおそろしい存在です。
    また、行政から特定空き家として認められてしまうと、行政代執行による強制的な取り壊しなどの処分を受ける可能性もあり、所有者も予期せず金銭的なダメージを負うことになってしまいます。
    トラブルが起こってしまったり、取り返しのつかないことになってしまってからでは遅いのです。空き家の活用はお早めに、しかし慎重に考えてから行いましょう。

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