空き家を放置すると危険?行政代執行について知っておこう

行政代執行、という言葉をご存じでしょうか
空き家対策特別措置法によって、特定空き家の条件に該当した空き家は行政から解体工事を命じられるようになりました。
しかし、この命令を無視し続けると「行政代執行」で強制的に解体されてしまうのです。

自分の空き家は大丈夫だろう、実際にはそんな大掛かりな事しないだろうと思っていませんか?
実は今年に入ってからだけでも、各県で何件もの特定空き家が行政代執行されています。
空き家を放置してしまっている方、空き家のメンテナンスを怠っている方にとっては、行政代執行は意外と身近なものになってきています。

今回はそんな「行政代執行」のしくみと、代執行にならないために出来る事をご説明していきます。

行政代執行のしくみ

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そもそも、特定空き家の条件はどいいったものかと言うと老朽化により倒壊の恐れがある状態である、悪臭や害虫の発生を促す状態である、著しく景観を損なっている状態である、その他近隣に多大な迷惑、不安を与えている状態などが当てはまります。
そんな危険な空き家を放っておくと、行政代執行に繋がってしまう訳です。

特定空き家の条件についてはこちらの記事で詳しくご説明しています。 特定空き家の基準特定空き家にならないために知っておきたい判断基準とは

行政代執行ってどんな意味?

文字通り行政機関が代わりに執行する事を意味します。
つまり、「行政機関による解体、撤去命令に応じない空き家所有者」に代わり、行政機関が強制的に解体工事を執行する事です。

本来、日本国憲法により個人の人権は尊重されていて、守られるべきものです。

憲法13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

しかし、上記13条にある通り公共の福祉に反する場合…空き家の場合は周囲に危険を及ぼす可能性がある、不安を与えたり迷惑をかける状況を指します。

要するに行政代執行とは、行政機関の指示に応じなかった市民に対しての最終手段という事になります。

実例

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2016年3月1日、全国で初めて所有者が判明している空き家の代執行が行われました。
築50年にもなる木造住宅は、もう10年以上も誰も住まいない空き家となっていて、老朽化が進み倒壊する恐れがありました。
この空き家は私道と隣接していて人通りも多く、住民からの不安の声も多く寄せられていたと言います。
所有者は70代の女性で、手続きをする気力が無いと話していたため、行政は代執行に踏み切りました。

大阪府神戸市でも7月5日、代執行による解体工事が行われました。
築50年とみられる木造住宅は10数年前から放置されていて、老朽化が激しい状態でした。倒壊する可能性が高く、さらには隣の家屋に寄りかかっている危険な状態でした。
隣家の住人や近隣住民からの苦情を受け、市が空き家所有者に文書や訪問による勧告を行いましたが処置されなかったことから代執行が行われました。

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品川区では5月にごみ屋敷となっていた空き家のごみ撤去を行いました。
所有者は50代の男性で、10年ほど前から敷地外にゴミがあふれ出しはじめましたが、男性は公園などで生活していて放置されていました。
小学生の通学路に面する外壁が崩壊しており、近隣住民約1600人分の署名が提出され、勧告を行ったが期限までに改善されなかったため行政は代執行でゴミの撤去を行いました。
ごみ撤去後は崩れていた外壁を補修し、建物自体は解体しないケースとなりました。

これら所有者が判明している行政代執行は、所有者が費用を全額負担する事になります。

また、新潟市妙高市では8月に、廃業して数年放置されていた旅館を代執行する予定です。
鉄筋コンクリート4階建ての旅館は、屋根付近が崩れていて今にも全体が崩壊しそうな危険な状態で、近隣からは早く取り壊して欲しいとの声が多く寄せられていました。
隣家との距離が短く、倒壊すれば隣家に影響が出る可能性があった事や景観を損なう恐れがあったため代執行が決定しました。

所有者がいないため、予想される費用4800万は国と市の負担になるといいます。

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いずれも解体工事後、近隣住民からは「安心した」「やっと安心して眠れる」という喜びや安堵の声があがっていることから、行政代執行の必要性がわかりますよね。

家は、人が住んでいる場合と人が住んでいない場合とでは痛んでいく速さが全く違います。誰も住んでいない空き家は痛みが早いのです。
倒壊寸前の空き家は、近隣住民や通行人に多大な不安を与える迷惑な物件となります。
行政代執行が行われるようになってきたとはいえ、まだまだ危険な特定空き家が沢山存在していて近隣住民に恐怖を与えています。

また、行政代執行は行政の決めた業者が解体工事を行います。
費用の融通はもちろんききませんので、所有者自らで安くて優良な業者を探した方がはるかにお得です。

なによりも自身で解体工事を行う事で、近隣の方々とも市の役員とも関係を悪化させる事なく気持ちよく処理できますよね。
近隣住民から不安だから解体してほしいといった旨を伝えられたり、行政から指導が来た時点で解体工事に踏み切る事が望ましいです。

行政代執行までの流れ

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空き家の状態が危険だからといって、なにも急に行政代執行が決められるわけではありません。決められた段階を踏んで、最終的に行われます。

1.状態把握
特定空き家か判断するために、市町村の職員等に対して立ち入り調査の権限が与えられます。その結果に基づいて所有者に対し2以降の対策をとる事になります。

ここで立ち入り調査を拒否したり、妨げる場合は規定により20万円以下を支払わばければいけません。

2.指導
立ち入り調査の元、空き家が危険だと判断された時は助言、指導といった形で改善を要求されます。

3.勧告
指導、助言を受けても改善しない場合は勧告に変わります。勧告になると、期限を設けての改善を要求されます。
また、指導を無視して勧告になった時点で土地に対する固定資産税の特例対象から除外されてしまい、土地の固定資産税が増額されてしまいます。

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4.命令
勧告を受けてもまだ改善が見られない場合は命令になります。
最後の猶予期限が設けられて、改善命令が出ます。

5.代執行
期限内に命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科されます。そして最終手段として行政代執行が行われます。
執行時にかかった費用は全額所有者の負担となります。

一方的に代執行が決まる訳ではなく、所有者には意見を述べる場が設けられます。改善できないやむをえない事情があればその場できちんと説明しましょう。
逆に、どんな理由があろうとそれを伝えなければ代執行の対象となってしまうので注意しましょう。

また、気をつけなければいけないのが、命令の期限以内に改善を完了しなければいけないという点です。
命令の期限以内に改善に取り掛かればいい訳では無いので改善は計画的に行いましょう。

執行されないためには

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危険空き家の対象にならないためには、定期的なメンテナンスを行う等老朽化しない対策をとりましょう。
メンテナンスなど、定期的の様子を見に行く事が距離的な問題等で難しい場合にはリフォームなどの修繕を行って売る、貸すといった方法もあります。

修繕工事よりも建て替え工事の方が安く、手間もかからない場合は自ら解体して立て直すか更地のまま売却する事もできます。
使い道のない危ない空き家をただ所有して近隣に迷惑をかけ続けるよりも、収入に繋がりますし有益と言えるでしょう。

もし特定空き家になってしまったら指導、助言された時点で素直に従いましょう。
すぐに行動できない理由がある場合は行政に相談する事もできます。
対処する姿勢がある事が行政に伝われば、すぐに強硬手段に出るような事はありません。

無視したり、邪見にしてあしらったりするのは一番良くない対応です。
所有者自身も、近隣住民も、勧告に来る役員もそれぞれが嫌な気持ちになってしまい、誰も得をしません。きちんと対応、改善して行政代執行を免れましょう。

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まとめ

市民が安心して暮らせるように、市民の安全を守るために定められた規定が空き家特別措置法です。
指導された時点で「近隣住民や通行人に不安を与える家になってしまっている」という事を受け止める必要があります。

行政機関もいきなり強硬手段に出る事はなく、段階を踏んで最終手段として行政代執行を行います。
事情があれば早めに行政に相談して、改善する意志を示しましょう。

市民が安心して安全に暮らせる街づくりに協力するためにも、空き家の所有者はメンテナンスには十分に配慮したいですね。

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