「困った空き家」有効活用で「お金を生み出す物件」へ!

田舎にある実家を受け継いだものの、数年間手付かずのまま空き家に。自宅と離れているため、頻繁に足を運ぶこともできず片付けも行えていない状態・・思い入れのある我が家なので簡単に処分にも踏み切れない・・など、空き家オーナーの方で、どうしたらよいかわからずお困りの方はきっと多いと思いのではないでしょうか。

そこで、空き家の有効的な活用方法について様々なパターンをご紹介致しますので、少しでも皆様のお役に立てましたら幸いです。

深刻な空き家問題


平成25年の住宅・土地統計調査で全国で約820万戸という数字が出され、空き家が社会問題となっている昨今。野村総合研究所の調査によると、15年後にはその数が二倍になり空き家率は全戸数の3割を占める可能性が指摘されています。

平成27年に空き家対策特別措置法を制定され、老朽化した空き家を放置しておくと、「特定空き家」に認定され自治体によって強制撤去の対象となることも。今後ますます空き家対策に力を入れる自治体が増えることが予想されます。

「空き家の放置が大きなリスクに」
空き家オーナーにとって真剣に考えなくてはならない時代になったと言えるでしょう。

空き家の活用方法


さて、ここからは様々な空き家活用方法についてご紹介していきます。空き家をそのまま活かしたい、違う形で活用したい、一番お金を生み出せるものは?など求めるものはそれぞれかと思いますので、皆様にとって最適な方法を探してみてくださいね。

賃貸として活用


まず、空き家の活用方法で最も簡単に行えるのは、空き家をそのまま活かして賃貸住宅として貸し出すことです。家賃という形で不労所得が得られるのは魅力的ですよね。
その際、「普通借家契約」「定期借家契約」がありますので要注意です。

普通借家契約の期間は1年以上・上限なし(通常は2年)、契約期間が終了すれば借主が退去を希望しない限り、原則更新という流れになります。一度賃貸に出すと基本的に自分達の都合では賃貸を止めることはできなくなります。

一方、定期借家契約は貸主が契約期間を自由に設定することができ、期間が終われば契約を終了させることができるのです。勿論、双方の合意で再契約も可能です。契約期間が決められているため、通常よりも家賃が安い設定になるなど貸主にとってデメリットもありますが、いつか家を手元に戻したいという方は定期借家契約を選ぶのが良いでしょう。

空き家バンクを利用しよう!

それぞれの自治体やNPO法人等で行われている「空き家バンク」登録もお薦めします。登録は無料で、自治体のホームページで物件の情報をアップし貸したい人・借りたい人のマッチングを手助けしてくれ、賃貸だけでなく売買情報も取り扱っています。

遠方でなかなか足を運ぶことができないという方は、必要書類をダウンロードして担当係に郵送が可能です。地方に空き家をお持ちの方は、自治体のホームページをぜひチェックしてみてください。

また、国土交通省の「全国版 空き地・空き家バンク」モデル事業に選ばれている「アットホーム全国版 空き家・空き地バンク」「LIFULL HOME’S空き家バンク」では、全国の地方自治体が管理する空き家・空き地の情報を見ることができるのでとても便利ですよ。
ぜひご活用ください。

アットホーム全国版 空き家・空き地バンク</p

LIFULL HOME’S空き家バンク</p

ただし、自治体の空き家バンクを利用する場合は賃貸借契約や売買の仲介までは行ってくれませんので、自分達で契約条件などの話し合いをする必要があります。不安な方は不動産仲介業者に依頼すると安心でしょう。

借主負担DIY型


「自分好みにリフォームして暮らしたい」という方が増えている昨今。住宅のDIYもすっかり定着しましたよね。そこで、借主が自由に内装や設備をDIYでき、退出時の原状回復義務も免除される「借主負担DIY型」という契約スタイルが人気です。

特に、田舎暮らしをしてみたいという方は理想のイメージを持っている方が多いので、自分好みに家をアレンジできるのは大きな魅力になります。

一方貸主にとっては、修繕せずにそのまま貸し出すことができるので費用の削減になりますし、DIYした家は住む人にとってより愛着が湧くものなので、長く住んでくれる可能性が高くなるわけです。貸主・借主双方にとってメリットのあるものですので活用されることをお薦めします。

自治体のリフォーム助成(補助)


リフォーム・耐震改修助成(補助)を行っている自治体も多数存在します。新潟市の例を挙げると、定住や移住促進を目的にUIJターン世帯向けに上限50万円まで助成(補助)するというリフォーム助成制度があります。毎年4月頃から受け付けていて受け入れ件数も決められていますが、こういった自治体の制度は使わない手はありません。

古い空き家を貸し出す際、自治体に助成(補助)制度があると借主に対するアピールにもなりますので、貸主側も把握しておくと良いと思います。気になる方は空き家がある自治体のホームページをチェックしたり、問合せをしてみてくださいね。

シェアハウス


数人で一つ屋根の下に暮らすシェアハウスも大人気で、シェアハウスを運営する個人オーナーも増えています。一人暮らしよりも安く済みコミュニティの場にもなるため、若者を中心に入居を希望する方が多く、同じ趣味や職業などテーマ性があったり女性専用などシェアハウスの幅は更に広がりをみせています。

貸主にとっては満室になれば最大限の家賃収入が見込めますし、一人でも入居していれば収入0ではなくなり空室リスクが減ります。複数人で暮らすためトラブルが起きやすいというデメリットもありますがプラスも大きいでしょう。現在シェアハウスのほとんどは東京に集中していますが、独自のコンセプトを持って魅力あるシェアハウスを作れば、田舎でも暮らしたいという方は集まります。


ここで、ギークハウス新潟を例に挙げてみます。越後石山駅から徒歩10分という場所にある築30年超4LKの一軒家です。ギークハウスは、エンジニアやクリエーター・ガジェット好きなどネットをテーマにしたシェアハウス。
その独自のコンセプトが受け常に満室という人気物件です。家賃はドミトリーで1万円・個室で2万円と格安で、共益費の月8,000円を加えても3万円弱で済みますからお得ですよね。新潟市中心部の1R家賃相場が4万円台ということなので半分で済むわけです。

ギークハウス新潟

地方の場合は特に魅力的なコンセプトなど入居者を集める対策が必要ですが、シェアハウス運営にご興味のある方は、選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。

長野市 門前町の取り組み


移住促進・地域活性化を目的に様々な取り組みをしている地域も多いです。例えば、長野市 門前町では、ギャラリー・喫茶等を営む「ナノグラフィカ」が中心となって「長野・門前暮らしのすすめ」と題し、移住を検討している方向けに空き家見学会・相談会を実施したり、地域の魅力をアピールするイベントやワークショップなどを開催しています。

空き家がある地域でこのような活動を行っている場合は、空き家オーナの方も積極的に利用したいところ。街をもっと元気に!という活動は各地で広がっています。

長野・門前暮らしのすすめ

地域コミュニティ等の場所として活用


個人住宅やシェアハウスをとして貸し出すという以外にも、地域の役にたつ形で空き家を活用してもらうというのも一つです。
例えば、新潟市では「福祉活動活用助成(補助)」を行っています。
対象となる助成は下記の表の通りです。

用途 対象 補助金 上限額
地域の茶の間 誰もが気軽に集まり交流できる場所として活用 100万円(耐震改修あり)200万円(耐震改修なし)
高齢者向け共同移住住宅(シェアハウス等) 一人暮らし高齢者等の共同生活の場所として活用 100万円(耐震改修あり)200万円(耐震改修なし)
共同生活援助(障がい者グループホーム) グループホームとして、障がい者が地域で移住するために活用 100万円(耐震改修あり)200万円(耐震改修なし)

上記の助成(補助)は毎年4月頃から受け付けていて受け入れ件数には限りがありますが、地域の役に立ちたい!という方は自治体のこのような取り組みにも注目していただければと思います。

新潟市 空き家活用リフォーム推進事業

全国の空き家再生プロジェクト

続いては、全国で広がる空き家再生プロジェクトや、話題の建築集団などをご紹介していきましょう。
どれも、空き家=遊休不動産を人が集まる場所や価値あるものに生まれ変わらせている、素晴らしい取り組みです。
新たな考え方や発想の転換で、空き家はお荷物ではなくなります。空き家の利活用について考えていらっしゃる方にとって、全国の様々なプロジェクトは一つのヒントになるかもしれません。

尾道空き家再生

一つ目は、広島県尾道市で行われている「NPO法人 尾道空き家再生プロジェクト」
瀬戸内海と山々に囲まれた風光明媚な旧市街 尾道。斜面地に所狭しと家々が立ち並び、尾道ならではの街並みが広がっています。歴史と文化を感じる地域で年々増え続ける空き家を再生し、新たな活用方法を見出しているのが、このプロジェクトです。

これまで多くの物件が再生されてきましたが、有名なのは、尾道建築の象徴・空き家再生のシンボルになっている「旧和泉家別邸(通称 尾道ガウディハウス)」。
昭和8年に建てられた家は跡継ぎ不足で25年もの長い間空き家になっていました。老朽化が著しく解体の危機にあった建物を再生、今では和の空間を活かした貸しスペースとして様々なイベントが開催されたり、短期滞在可能な貸家として生まれ変わっています。

他にも、過去に商店として使われていた物件が子連れママの囲炉端サロンになったり、古いアパートが創作活動を行う方に使ってもらうレンタルスペース(ギャラリーや工房・ショップ等)になるなど、新たな価値を持った物件が増えているのです。地道な活動が功を奏し、尾道に移住し古い建物をセルフリノベーションする方も増えているのだとか。
地域の活性化に繋がっている、空き家再生・活用の好例と言えるでしょう。

尾道空き家再生プロジェクト

パーリー建築


続いては、各地の空き家を改装しながら全国を旅する集団「パーリー建築」です。友人や知人の紹介で改装を手がけてきた集団で、依頼主からお金を貰わない代わりに、無料で物件に住まわせてもらい、毎日のようにパーティーを開催。地元の皆様にも参加してもらいながら、楽しく改修を行っていくというところがユニークで大きな魅力です。

2015年には新潟県十日町市にある家が、シェア古民家「ギルドハウス十日町」としてオープン。地域の交流空間、様々な職種の方が共に働くコワーキングスペース、旅人等が訪れるゲストハウスなど、多様な機能を持つ古民家として多くの方々を虜にしています。
パーリー建築の取り組みは童心に帰るようなワクワクするものばかりで、建築や空き家の改修をとても身近に感じさせてくれます。

地域の人達を楽しく巻き込み、使われていなかった空き家が人々が集う場所に変わっていく。今後ますます増えていくであろう空き家の再生・活用の新しい道筋を示してくれているように感じます。
これからもパーリー建築の活動から目が離せません。

パーリー建築

BASE 8823


三つ目にご紹介するのは、鳥取県隼(はやぶさ)地域にある秘密基地のようなゲストハウス「BASE 8823(ベース ハヤブサ)」

スズキの大型バイク「隼」愛好家の聖地となっている地域にて、空き家を活かして作られたライダーのためのゲストハウスです。安全にバイクを保管できるガレージや洗車スペース・メンテナンス用品を完備し、愛車を眺めながら楽しめるバー&カフェも。部屋はドミトリー形式で素泊まり1泊3,800円。ライダー目線で様々な設備が設けられているので、隼愛好家だけではなく、全国のライダーが集まる人気の宿泊施設になっています。

BASE8823を手掛けた「まちづくり会社トリクミ」では、町の人達が集まるコミュニティスペース・飲食店である「ちいきの台所 HOME8823」も、BASE8823に先駆けてオープンしています。
地元のためにできることはないか?と同級生同士で初めた活動が大きく広がり、唯一無二の価値を生み出す場所になっているなんて、本当に素晴らしいことですね。
今後も、このような活動は多くの地域で広がっていくと思います。

BASE 8823

上記のような空き家活用の成功事例は、地方の空き家オーナーで、違う形で活かしたいという方の参考になるのではないでしょうか。

まとめ


様々な空き家活用方法や地域で行っているプロジェクトなどをご紹介しましたが、いかがでしたか?「どうせ田舎だし」「古い建物だから使えないだろう」と諦めるのは早いですよ!ご本人にとって価値がないと感じる空き家でも、必要としている方はきっといますし、工夫次第でお金を生み出してくれる立派な資産になります。

古き良きものを活用し、地域の活性化に繋げよう!という意識が高まり、まちづくりも積極的に行われている時代だからこそ、空き家に新しい息吹を吹き込む、その一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。