これだけは知っておきたい!空き家対策の基礎知識

近年ニュースでも話題になることが増えた「空き家」問題。相続した家等の空き家を所有されている方は、今後どう対策すべきかお迷いの方も多いと思います。

社会問題を背景に、平成27年には「空き家対策特別措置法」という法律も施行されました。何か空き家の対策をしなければと思ってはいても、具体的にどんな問題があって、どのような対策をすれば良いかは難しい問題です。

今回は空き家が引き起こす問題や法律・実際にどのような空き家対策があるのかなど、空き家に関して知っておきたい基礎知識についてご紹介致します。

社会問題にまで発展。空き家の現状

空き家の増加は近年社会現象になっており、空き家率は平成25年では過去最高の13,5%の820万戸に達しており、2033年には30%を超える見通しと言われています。日本の住宅市場の特徴などを背景に、日本の空き家は増加しています。

空き家を所有されている方は問題が起きてから後悔することの無いよう、空き家の現状と問題点について理解することが大切です。

空き家が増加している原因

空き家は地方だけではなく、都心部でも増加しています。核家族や高齢者の一人暮らしが増えたことから、一世帯に住む人数が減って世帯数は増加しています。しかし、日本では家を購入する際新築を好み、中古住宅は好まれづらい傾向にあるため、現在でも新築住宅が多く建てられいます。その結果として、世帯数の増加よりも住宅数が増えている、ということが空き家が増加する原因の一つとして挙げられます。

その他にも、人口の減少・古くなった住宅を解体するのに費用がかかる上に、固定資産税がかかるために取り壊しができない・思い出の詰まった家だから壊さず残しておきたいなど、様々な原因で空き家は増加しています。

空き家の社会問題

管理されていない空き家が及ぼす問題の一つは、近隣住民や地域に不利益や損害などの悪影響を与えることです。空き家が引き起こす大きな問題には下記の3点が考えられます。

老朽化による倒壊

人の手入れがなくなると、建物の老朽化は急速に進みます。老朽化した建物は、瓦や塀などが落下する危険があります。また台風や地震・大雪の影響を受けると倒壊の恐れもあり、周囲の建物や近隣住民に被害を与える可能性があります。もし空き家が老朽化により建物や人に被害を及ぼした場合、「土地工作物責任」という民法に基づき損害賠償を請求される可能性もあります。

犯罪の増加

空き家に関連する犯罪として、不法侵入・不法占領があります。鍵を壊し空き家へ不法侵入して、不審者が住み着いてしまうケースも見受けられます。ニュースでも都心部や地方に関わらず空き家への放火が過去に報道されています。空き家がターゲットとなるだけでなく、空き家が多い地域は、放火などの犯罪に狙われやすいとも言われており、近隣住民が防犯への不安を抱くことが予想されます。

景観の悪化

敷地内に雑草が伸び放題となり、景観を悪化します。単にその家の景観が悪いというだけではなく、周辺の不動産物件にも影響を与えます。また害虫の大量発生や害獣が繁殖し、敷地内だけではなく周囲へ拡散することもあります。害虫被害の他にも、ゴミが不法投棄され悪臭が発生するなど、衛生面に関する環境悪化も発生します。

対象にならないために。空き家対策特別措置法とは?

平成27年に「空き家対策特別措置法」が施行されました。ニュースや新聞などでも取り上げられましたが、具体的な内容まではご存じない方も多いのではないでしょうか。

しかし空き家対特別措置法は、空き家をお持ちの方の固定資産税にも深く関係する法律であり、施行の対象になってしまうと最終的に罰則の措置を受ける可能性があります。空き家対策特別措置法に関して、初めに知っておきたい内容に関して見ていきましょう。

空き家対策特別措置法とは

今までは倒壊の危険を伴う空き家があっても、所有者の許可がない限りは、国は空き家に対して対策をすることは出来ませんでした。しかしこの空き家対策特別措置法が施行されたことで、倒壊の危険がある等の条件に該当した空き家は、行政により取り壊すなどの対策が可能となりました。

要するに空き家対策特別措置法とは、一定の条件に該当した空き家を「特定空き家等」と指定して、行政の立ち入り調査や取り壊しの命令を出したり、命令に違反した場合の罰則があると定めたものなのです。

空き家対策特別措置法の目的

空き家による社会問題や今後も空き家増加が見込まれていることを背景に、空き家対策特別措置法が制定されました。

空き家対策特別措置法は、地域住民の生命や財産の保護をすること、また住民の生活環境の保全を図るとともに、空き家の活用を促進することを目的としています。特別措置法では、この目的を成し遂げる為の基本方針と、各市町村が行う空き家対策を促進するために必要な項目が定められています。

特別措置法の対象となる特定空家とは

空き家対策特別措置法の対象となるのが「特定空家」です。所有している家が特定空家と判断された場合、これまでの最大6倍の固定資産税を払う可能性があります。

放置すると倒壊する危険がある、または著しく衛生上問題がある状態などの空き家を、特定空家と定義しています。この特定空き家の持ち主に対して、市町村は立ち入り調査の権限と、撤去・修繕の勧告や命令をすることが出来ます。いきなり命令をするのではなく、助言から始まり、改善がなければ勧告、次に命令と段階を踏みます。

いづれにしても命令に違反した場合は、50万円以下の過料や強制撤去が行われます。また撤去にかかる費用は空き家の所有者が負担することになります。そのようなことにならない為にも、市町村の調査が入る前の対策が重要となります。

特定空き家の基準特定空き家にならないために知っておきたい判断基準とは

早期解決のために。4つの空き家対策

空き家の50%以上は、相続物件であると言われています。家の相続が突然決まったが相続した家には住むことも出来ず、簡単には慣れ親しんだ家を解体工事する気持ちにもなれない・・という方も多いかと思います。

しかし空き家を長期間そのままにしておくと地域住民への危険性があり、特定空家に指定された場合は固定資産税の増加など所有者の方に関わる問題も発生します。出来る限り早期の対策が求められる空き家において、知っておきたい4つの対策をご紹介します。

管理をして維持する

家を相続した場合は遠方に家がある場合も多く、定期的に家の手入れを行うことは難しいかと思います。しかし、長期間家を手入れしていない場合、害獣や害虫の被害・不法投棄などによる悪臭・老朽化による瓦の散乱等で地域住民に悪影響を与えてしまいます。

空き家の所有者として、家の内外部の修繕と清掃・家の換気・雑草の整備などの住居を管理する必要があります。もしご自身で管理をすることが難しい場合は、代行サービスに申し込むことも可能です。近い将来、相続した家に移り住む予定のある方や、まずは一定期間考える時間をおきたい場合は管理サービスに申し込むことも一つの手段です。

空き家管理サービス

空き家の代行管理サービスの主な内容は下記の通りです。代行先ごとによりサービスの内容は異なるため、事前にご確認下さい。

・室内の換気、点検、清掃、不用品の処分
・庭の剪定、郵便物の確認、室外の清掃
・家の修繕手配、指定を受けた近隣住民への訪問

大東建物管理やセコムホームセキュリティー・アルソックなどの会社や、NPO法人の空き家空き地管理センターなどで代行サービスを行っています。提供されるサービス内容や、月の巡回回数により料金が異なりますが、場所によっては月1一回の巡回で10,000円前後からサービスを提供しています。

簡単に検索した結果、該当した空き家管理サービスを行っている会社の一覧として、下記をご参照下さい。下記以外にも様々な会社や団体でサービスを行っているので、一覧以外にも検索してご自身に合ったサービスを探してみて下さい。

大東建託パートナーズ:空き家管理サービズ

HOME ALSOK:るすたくサービス

セコム・ホームセキュリティー:空き家サービス

アリックスホーム:空き家管理-サービス

NPO法人空家空家管理センター:管理サービス内容

賃貸として活用する

空き家の賃貸活用として注目されているのが「空き家バンク」です。空き家を何かに活用したくても難しい場合は、空き家バンクに申し込むという方法があります。空き家バンクとは空き家の所有者と移住や利用希望者をマッチングさせる仕組みのことで、自治体や一部のNPOなどが運営しています。

空き家バンクの特徴

空き家バンクは主に自治体が運営しています。通常家を売却する時のように不動産会社に任せきりという形式とは異なり、自治体が契約等に関しては干渉しないケースもあるため、自主的に行動する必要があります。空き家バンクを実施している自治体は、400以上の市町村に及ぶと言われています。

空き家バンクに住宅を登録する場合は、各自治体に問い合わせを行います。空き家バンクを運営している自治体の場合は、ホームページ等に詳しい記載があります。例えば、東京都の奥多摩町で空き家バンクを探した場合は下記のように検索結果がでます。

奥多摩町の空き家バンクに関するホームページが見つかるので、そちらに空き家バンクの内容が書かれていました。

このように、空き家バンクをおこなっている自治体の場合は、「空き家バンク+地域名」で検索すると探すことができます。所有している建物の各自治体を検索して、該当がない場合はお住いの役所のホームページや窓口で確認してみましょう。
空き家を解体せずに有効活用できる「空き家バンク」に登録するには?

更地か古家付き土地として売却する

将来住む予定もなく貸し出す手間をかけたくない場合は、売却するという方法があります。相続した家の売却を検討する方は、相続後何年経っているかにより譲渡税が軽減される可能性があります。もし売却を考えている場合は、売却によりどの程度節税されるか、早期に計算することをお勧めします。

中古戸建と更地の売却

空き家を売却する場合は、中古戸建又は古家付き土地としてそのままの状態で売却する方法と、解体工事をして更地にした後売却する方法があります。

中古戸建や古家付土地で売却する場合は、手間や解体費用をかけずに売却できるメリットがあります。解体して売却する場合は、築年数が経った場合は特に、更地にした方が高値で売れる可能性があるというメリットがあります。

それぞれのメリット・デメリット以外にも、固定資産税の関係や建物の状態等を踏まえ、プロにアドバイスをもらい売却方法を検討しましょう。

解体工事をして更地にする

空き家対策特別措置法の施行や地域住民の安全性を考えると、空き家を長期間放置することは出来ず、将来住む予定がなければ管理利用も長期的になるほど高額になります。

空き家の関係者で話し合いを重ねた上で、将来誰も住む予定もなく賃貸する可能性もない場合は、維持のための管理費用をかけずに解体工事をして更地にするのも一つの方法です。ですが空き家を解体工事した状態で1月1日になってしまうと、今までの固定資産税の軽減がなくなってしまうので注意が必要です。解体工事を行う場合は、解体工事の後に土地を売却するのか、駐車場などで活用するのか等の計画を立てて時期を考慮することが重要です。

解体費用の助成金

自治体によっては、老朽化した建物の解体工事にかかる費用の一部が助成される場合があります。助成金は国からすべての人に出るわけではなく、自治体によって異なります。助成を受けることが出来る家の条件は、その自治体ごとによって異なるので、空き家のある自治体への確認が必要です。事前に助成金があるか調べることで、解体費用の負担を減らすことが出来るかもしれません。

また解体工事と一括りに言っても、解体費用は業者により大きく異なり、解体後の更地の状態にも違いがあります。更地の状態によって売却価格にも差がでることもあるので、安心して解体工事を依頼できる業者を選ぶことが重要です。

まとめ

空き家の増加に伴う社会問題として、放火などの犯罪の誘因や、建物の崩壊による住民への被害がニュースになっています。また、もしご自身が所有している家が特定空き家に指定されてしまった場合、これまでの住宅免除がなくなり固定資産税が増え、また市町村の命令に違反した場合は50万円以下の過料や強制撤去となる可能性があります。

そのようなことが起きないよう、まずは空き家が引き起こす問題を知った上で、空き家の対策を検討することが重要です。対策としては大きく分けて①管理をして維持する②賃貸として貸し出す③売却する④解体するという4つの対策があるとご紹介しました。所有している物件の状態や所有者の希望を踏まえ、一番合った対策を少しでも早い時期から始めることが大切なのではないでしょうか。

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