空き家対策特別措置法から考える!空き家を解体するメリットとデメリット

空き家対策特別措置法が可決されてから、空き家問題についてメディアでも頻繁に取り上げられるようになりました。

空き家をお持ちの方は、空き家対策特別措置法によってご自身にどんな影響があるか気になる所ですよね。また、空き家対策の一つである解体工事は、馴染みのない業界なのでご不安に感じられることも多いのではないでしょうか。

今回は空き家対策特別措置法について、そして空き家を解体工事するメリットとデメリットについてご紹介します。

空き家対策特別措置法とは?抑えておきたいポイント

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今までも空き家に関する対策はありましたが、空き家対策特別措置法が施行されたことで何が変わったのでしょうか。今までの空き家対策は自治体による「空き家バンク」などで空き家の活用を促す内容で、行政が直接調査や指導を行う内容ではありませんでした。

2015年に施行された空き家対策特別措置法は、周囲に悪影響を及ぼすような「特定空き家」と判断した空き家を、各市町村が立ち入り調査や指導、また命令に従わない場合は強制解体を行うことが出来るとした内容です。

まずはこの空き家対策特別措置法に関して、空き家所有者が知っておきたい内容をご紹介します。

空き家対策特別措置法ができた背景

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空き家は年々増加しており、平成25年の空き家率は過去最高の13,5%で820万戸に達しています。加えて新築住宅は年間約90万戸建築されており、このままのペースで新築が建てられ空き家問題も解決しない場合、将来的に日本の住宅の3軒に1軒は空き家になると言われています。

管理されていない空き家が増えた結果、現在でも近隣住民や空き家の多い地域にトラブルが発生しています。庭の雑草が伸び放題となり景観が悪化するだけではなく、雑草やゴミの不法投棄によって害虫や害獣が増えて衛生面に関する環境悪化も発生します。

人が住まなくなると、建物は急速に老朽化が進みます。老朽化した建物は瓦や塀の落下・倒壊の危険が高まり、地域住民に被害を与えてしまう可能性があります。倒壊しない場合でも、空き家の多い地域では実際に不法侵入や放火による被害が起きています。

このように空き家の増加と、空き家による被害が起きていることを背景に、地域住民の生活や安全を保護して空き家の活用を促すことを目的に、空き家対策特別措置法は施行されました。

対象となる特定空き家等

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空き家対策特別措置法の対象となるのが特定空き家です。特定空き家とは簡単に言うと、地域や周辺住民などに悪影響があると判断された空き家のことで、下記の内容に当てはまる空き家を特定空き家等と定めています。住居目的の空き家だけではなく、建築物や工作物などで使用していない建物も特定空き家等の対象となります。

・そのまま放置していると倒壊など保安上の危険となる可能性のある建物
・そのまま放置していると衛生上有害となる可能性のある建物
・適切な管理がされていないがために景観を損なっている建物
・周辺の生活環境を守るために放置してはおけないと判断された建物

特定空き家等に該当するかどうかは、市町村によって判断されます。市町村はいきなり特定空き家に指定するのではなく、段階を踏んで行政指導を行います。

行政指導の流れ

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ニュースで特定空き家の解体が取り上げられた映像が印象に残り、空き家をすぐに強制解体するイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。ですが、いきなり空き家の解体工事を行うのではなく、段階に合わせた措置を踏んでいきます。行政はどのような流れで特定空き家の所有者に措置をしていくのでしょうか。

①改善への助言・指導
空き家の所有者は特定が難しいため、登記簿や住民票以外にも固定資産税の課税台帳等を使用して所有者を特定します。特定した所有者に対して、空き家の解体や修繕の指導や助言が行政により行われます。
②勧告から命令
助言や指導を受けても改善されなかった場合、書面で勧告が行われます。勧告にも従わない場合は、猶予期限が付いた改善命令がされます。空き家を改善できない正当な理由があった場合は、この段階で意見を述べる機会が与えられます。

税金対策として空き家が放置されるのを防ぐことも視野に入れ、勧告の対象になった場合は減額の特例から除外されて、固定資産税が上がります。

③強制対処
命令にも従わなかった場合、行政代執行により強制的に改善や解体工事が行われます。行政が代わりに特定空き家の解体工事を依頼して、後から空き家の所有者に費用を請求します。

空き家の強制解体のニュース

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実際に特定空き家に指定されて、行政代執行が行われたケースはニュースでも取り上げられました。2015年の10月には神奈川県横須賀市で空き家の強制解体が行われ、所有者の
特定が出来なかった為解体費用は横須賀市が負担することになりました。

2016年3月には、全国で初めて所有者が特定されている空き家の強制解体が行われました。特定空き家に指定された後命令が出されていましたが所有者が応じなかったため、同年3月に強制撤去が行われ解体費用はすべて所有者の女性に請求さました。

2016年末時点で全国において20件以上の強制撤去が報じられていますが、約8割が所有者の特定が出来ずに解体費用の回収が出来ていないという問題も報じられています。

空き家を解体工事する前に!メリットとデメリットを知っておこう

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行政の指導に従わずに空き家を放置すると、勧告を受けた場合に固定資産税が増額される・行政により強制撤去が行われるといったリスクを伴います。また、空き家が倒壊したことにより第三者や近隣の建物に被害を与えた場合は、損害賠償義務を負うことになります。

空き家によるトラブルを避けるためにも、所有している空き家の早期対策をとることが必要です。空き家の対策は大きく分けて下記の5つの方法があります。

①一定期間管理する
②リフォームする
③賃貸する
④売却する
⑤解体工事をして更地にする

もし数年後移住する予定や人に貸す予定がある場合は①~③の方法も視野に入れることが出来ます。

しかし住む予定や賃貸を考えていない空き家は、売却か解体の決断をする必要があります。空き家を長期間放置出来ないため、何らかの対応をしようと考えた時は、それぞれの特徴を知ったうえで判断することが重要です。実際に空き家を解体工事することにした場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

空き家解体のメリット

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所有している空き家に将来住む予定がなく、賃貸の手間をかける時間の余裕がない場合、空き家を解体工事するという解決方法があげられます。解体工事した場合にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

空き家被害のリスクがなくなる
解体工事をして土地を更地にした場合、建物の倒壊による近隣住民への被害や、建物への侵入者による犯罪のリスクをなくすことが出来ます。
空き家を管理する手間がなくなる
日本の住居は木造が多く、人が住まなくなり定期的に手入れをしなくなると急速に老化します。その為ご自身で定期的な管理を行うか、代行サービスを利用して建物の定期的な手入れをする必要があります。

数年後に住む予定がなければ、管理する費用も時間が経つ程かかります。解体工事で更地にすることで、空き家を管理する手間と管理にかかる費用がなくなります。

土地が売れ易くなる
日本では新築に住みたいという需要が多いため、更地のほうが買い手が付き易い傾向にあります。建物を解体工事せずに売ることも可能ですが、建物や庭木がある状態だと買い手が土地を見た時、広さやどんな家を建てようかという想像がつきづらくなります。

更地の状態であれば、2階建ての家を何坪で建てて、庭に子供の遊ぶスペースを作って・・・と具体的な想像が出来るため買い手が付き易くなります。そのため古い建物が建っている土地よりも、すぐに新築を建てることが出来る更地になった土地の需要が多いのです。

こちらの記事で建物付きと更地で売却する場合のメリットとデメリットをご紹介していますので、参考にして下さいね。

古家付き土地を売却する方法とは?
活用の幅が広がる
建物がある状態だと空き家を活用する方法しかありませんが、解体工事をして更地にした後は駐車場や発電プラント等の様々な形での活用が可能になります。
譲渡所得の特別控除が適用される
平成28年の税制改正により、一定の要件を満たした空き家を期間内に解体工事して譲渡した場合、譲渡所得税が大幅に減額されることになりました。

売却をする事で近隣住民にリスクのある空き家を減少させる事を目的に、相続した空き家を耐震工事又は解体工事して譲渡した際に、要件を満たしていれば3,000万円が特別控除されます。

昭和56年5月31日以前に建築された建物である等、特別控除のためにはいくつかの項目を満たしている必要があるため、詳しい内容については国土交通省のホームページをご参照下さい。

国土交通省:空き家抑制のための特別措置

空き家解体のデメリット

解体工事をした後に後悔することの無いよう、空き家の工事を行う前に必ず知っておきたいデメリットに関してご説明します。

解体費用がかかる
空き家を解体工事するデメリットの一つは、空き家の管理や賃貸にはかからない解体費用がかかることです。一度にまとまったお金が必要になるため、解体工事に踏み切るか迷われる大きな理由の一つです。

空き家を解体工事する場合は、地域によって助成金・補助金が出るケースがあります。助成金制度の有無や、助成金の内容・対象となる空き家は各自治体ごとで異なります。

ご自身が空き家を所有されている地域に助成・補助金制度があるかどうかは、「解体+補助金+市区町村名」「解体+助成金+市区町村名」で検索をかけると、助成・補助制度がある場合は表示される可能性が高いです。出てこない場合は自治体の方に「空き家の解体工事を検討していますが、助成制度や補助金制度はありますか?」と直接聞くことも方法の一つです。

固定資産税が上がる
住宅用の建物が建っている土地は、土地にかかる固定資産税を1/6~1/3に軽減されています。空き家を解体工事して更地にした場合、固定資産税の軽減がなくなるため税金が上がってしまいます。

税金が大幅に上がるなら空き家をそのままにしておきたい所ですが、前述でご説明した通り「特定空き家」に指定され「勧告」を受けた場合は、減税の特例が適用されなくなります。特定空き家に指定されると、建物を解体したのと同様に税金があがってしまうということです。

一律には判断出来ない!空き家の解体工事にかかる費用

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空き家の解体工事を視野に入れた場合、一番気になるのが解体費用です。空き家の解体工事では自治体や建物の条件によって助成金がでるケースもありますが、全ての地域で助成金が出る訳ではないので空き家の解体費用の相場を知っていおきたいところです。

空き家の解体費用は建物の条件だけではなく、立地によっても大きく変化します。例えば同じ条件の建物でも、一方の建物は通路が狭く重機の搬出入が出来なかった場合、その分工事期間が増えて費用が多くかかるというケースもあります。その為一例にはなりますが、解体費用の算出方法をご紹介します。

解体費用の算出方法

解体工事の費用の相場は、建物の構造別に坪単価で算出されています。一般的な家屋の解体費用の大幅な相場としては下記の通りです。木造の家屋は重機の使用が少なく、廃棄物にかかる金額も抑えられるため、鉄筋やRCに比べて安い費用で解体できるケースが多いです。

・木造家屋解体相場 1.8万円~4.0万円
・鉄骨家屋解体相場 2.5万円~4.5万円
・RC家屋解体相場 2.5万円~6.0万円

しかし解体工事は建物の構造以外にも、立地条件・大きさ・処分品・地中埋設物の有無等によって大きく変わります。そのため現地に行って立地や建物等を確認しないと正確な見積もりを算出することは出来ません。主に解体費用にかかる内容は養生費・解体費・重機運転費・人件費・廃棄物処分費・事務処理費です。

実際に現地調査に行くことで、条件を踏まえて細かく何に幾ら掛かるか解体費用の見積もりを出すことが出来ます。そのため解体をご検討されている場合は坪単価の相場だけで判断するのではなく、実際に現地調査の上見積もりを貰った上で判断することをお勧めします。

まとめ

空き家対策特別措置法の施行によって、特定空き家に指定された場合は固定資産税が増額され、段階を経たあと最終的な命令に従わない場合は強制解体が行われます。

空き家調査には一定の時間が掛かるため、すぐに特定空き家に指定される訳ではありませんが、空き家を長期間そのままにすることは近隣住民へ被害が及ぶ可能性があり、大きなリスクを伴います。

うちは大丈夫だろうと思っていたら行政から通知がきてしまった・・ということを避ける為にも、空き家対策の種類とそれぞれのメリット・デメリットを知った上で対策を選ぶことが重要です。空き家対策特別措置法の施行に関わらず地域住民の安全を守りご自身のリスクを回避するためにも、早期の空き家対策が求められています。

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