不動産売却時に必要となる税金と節税方法

不動産を売却する際、不動産会社に仲介を依頼して成立した取引の場合、売買価格×3%~5%の仲介手数料を払わなくてはいけません。
しかし、それさえ払えばもう必要な費用はない、というわけではありません。
その物件によって異なりますが、ほとんどの場合、不動産譲渡所得税抵当権抹消登記免許税印紙税を納めることが必要となります。

とはいえ、できれば少しでも支出は抑えたいもの。
今回はそれぞれの税金について、そして節税方法についてご紹介いたします!

不動産譲渡所得税

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不動産譲渡所得税とは、不動産を売却した際に利益が出た場合にかかる所得税(国税)、住民税(地方税)のことを指します。譲渡所得税は、通常の給与や所得にかかる税金とは別の税金となるため、申告分離課税と呼ばれています。

所有期間によって異なる所得税額

譲渡所得税は、その不動産を所有していた期間によって税率が異なります

所有期間 所得税率 住民税率
長期譲渡所得 5年以上 15% 5%
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%

なぜ所有期間によって税率が変わるのかというと、その理由は「地価の安定」と「住宅地の供給促進」にあります。
所有期間が短期の物件に対しては地価の安定のために税率を上げ、長期の物件に対しては住宅地などの供給を促進させるため、税率を低く設定しているのです。

注意すべきなのは、5年経過しているかは「不動産を購入した日から売却した日」で計算するのではなく「売却した年の1月1日時点で5年経過しているか」と考えるということです。つまり、もしもその物件を2015年の7月1日に買っていたとすると、2020年の7月7日では5年未満とみなされ、2021年1月1日以降の売却で5年を超えたことになるということです。

所有期間が5年以下だと、所得税と住民税を合わせた譲渡所得税の税率は39.63%、5年以上だと20.315%。その差は19.315%。なんと、短期所有の場合だと長期所有の場合の約2倍もの税金を支払うことになってしまいます。
もしもご自身の所有期間が5年以下だった場合、もう少しで5年に届きそうならば少し期間をおいて、改めて売却活動を行うというのもアリかもしれません。

長期譲渡所得の軽減税率の特例

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更に、所有期間が10年を超える住宅を売却する際には、長期譲渡所得の課税特例により、税率が更に軽減されます。

課税長期譲渡所得 所得税率 住民税率
6,000万円以下 10% 4%
6,000万円以上 15% 5%

課税長期譲渡所得が6,000万円以上の部分は所得税率15%、住民税率5%となりますが、6,000万円以下の部分に関しては所得税率10%、住民税率4%が適用されます。
つまり、例えば課税長期譲渡所得が7,000万円だった場合、6,000万円分は所得税率10%、住民税率4%となり、1,000万円分の税率は所得税が10%、住民税が4%となるわけです。

この軽減特例を受けるためには、次のすべてに当てはまることが必要です。

軽減税率の特例の要件

  • 日本国内にある、所有者の住んでいる家屋(自宅)の売却する、もしくは
     家屋とともにその敷地を売却すること
  • 売却した年の1月1日において、家屋や敷地のいずれの所有期間も10年を
     超えていること
  • 売却した年の前年及び前々年に当該の特例を受けていないこと
  • 売却した家屋や敷地について、マイホームの買い替えや交換の特例等の他の
     特例を受けていないこと
  • 売主と買主の関係が、親子や夫婦などの特別な間柄でないこと
  • 抵当権抹消登記の免許税

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    抵当権とは、銀行や他人からお金を借りる際不動産に設定する担保権のことを言います。不動産に付けられた抵当権はあくまで元の所有者のものですから、買主がその不動産を取得する際に、抵当権をも取得してしまわないように登記を抹消しなくてはなりません。

    そして、この登記を抹消する際にかかるのが登録免許税です。
    登録免許税は1物件につき1,000円かかりますので、例えば家と土地のいずれにも抵当権が設定されていた場合、抹消する際に2,000円がかかることになります。

    抵当権抹消登記のやり方

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    抵当権抹消登記は、その不動産を管轄している法務局に申請することが必要で、どの法務局にお願いしても良いわけではありません。法務局は不動産の所在地によって決まっていますので、その不動産の住所の管轄の法務局を検索し、まずは電話で尋ねてみましょう。

    原則として、その不動産の所有者が申請しなければなりませんが、名義人が既に亡くなっている場合などは代理人が申請することも可能です。
    また、抵当権抹消登記に「いつまでにしなければならない」という期限は設けられていませんが、書類を紛失してしまうと再発行がしてもらえないため手続きが面倒になってしまいますし、相続が発生すると更にややこしくなってしまいます。できるだけ早めに手続きを終えたほうが後々のためになるでしょう。

    抵当権抹消登記の必要書類

    法務局に提出する書類は、全部で6つあります。

    自分で準備する書類
    ・抵当権抹消登記申請書
    ・登録免許税 印紙貼用台紙
    この2つはネットでもダウンロードできますので、ご自身で準備しましょう。

    金融機関から預かる書類
    ・登記原因証明情報
     (解除証書、弁済証書ともいいます)
    ・登記識別情報、登記済証
     (抵当権設定契約証書ともいいます)
    ・代理権限証明情報
    ・資格証明情報

    管轄の法務局に相談すれば、どのような書類を用意するべきなのか、どのような書き方をすればよいのか?などをより詳しく教えてもらえるはずですので、まずは管轄の法務局に連絡してみましょう。

    売買契約書の印紙税

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    印紙税とは、印紙税法で定められた課税文書に対し課税される税金のことをいいます。
    不動産の売買取引においては、売買契約書等が課税文書に該当し、契約書の記載金額によって税額が決定します。
    印紙税の納付は、定められた印紙を契約書に貼り、消印することによって完了します。
    同じ契約書を複数作成する際にも、1通ごとに印紙を貼らなくてはなりません。

    契約書印紙税額の一覧表

    記載金額 不動産売買契約書
    1万円未満 非課税
    10万円以下 200円
    50万円以下 200円
    100万円以下 500円
    500万円以下 1,000円
    1,000万円以下 5,000円
    5,000万円以下 10,000円
    1億円以下 30,000円
    5億円以下 60,000円
    10億円以下 160,000円
    50億円以下 320,000円
    50億円以上 480,000円

    このように、契約書に記載されている売買代金によって、納めるべき印紙税の価格は異なります。

    一般の個人が売主となってマイホームや別荘などを売買する場合は、発行する領収書には印紙税を貼る必要はありません。ただし、マイホームや別荘でない建物のの場合は、印紙税が必ず必要となりますので注意しましょう。

    印紙税の節税方法

    売買契約書には金額ごとに収入印紙を貼らなくてはいけないわけですが、この売買契約書は、本来売主買主のどちらも持っておくべき書類とされていました。しかし、現物を持っている必要があるのは買主のみ。売主が現物を持っている必要はないのです。

    つまり、現物は買主に渡し、売主はコピーを所有しているということだけでも双方で売買契約書を所持しているということになりますので、収入印紙をしっかり貼った契約書を買主へ渡し、売主はその売買契約書をコピーしておき、保管すればよいのです。

    例えば譲渡取得額が7,000万円だったとすると、印紙代は30,000円
    もしも買主用・売主用に契約書を作り印紙代を貼っていた場合、実に60,000円もの金額がかかってしまいますから、この税を半分にカットできるのは助かりますね。

    まとめ

    いかがでしたでしょうか?今回は、不動産に売却する際に必要となる税金と、節税方法についてご説明いたしました。

    不動産売却には何かと面倒なことが多いし、お金がかかってしまう…と不安になっている方は、一度しっかり何を支払うべきなのかをまとめて、不動産会社や法務局に連絡をとり、現状を相談してみましょう。

    せっかくの売却だというのに、売買代金よりも経費が上回ってしまっては残念ですよね。
    損をしてしまうことがないように、しっかりと税金の知識を身につけておきましょう!

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