不動産査定は前提として無料です。一方で、頼む人は少ないですが、有料で不動産の査定を行う場合もあります。なぜ、お金がかからない査定とかかる査定が存在するのでしょうか?有料の不動産査定と無料の不動産査定を比較することで、「査定」の本質が見えてきます。
「査定」の本質とはいったい何なのか?ここでは有料・無料の不動産査定について考察していきたいと思います。
査定が有料なのは不動産鑑定士!わざわざ専門家に依頼する理由は?
日本には不動産の価格査定を職業としている人がいます。それは不動産鑑定士と呼ばれる国家資格を持つ人たちです。不動産鑑定士は、物件の「鑑定」や「査定」を行うことによって収入を得ています。そのため不動産鑑定士に依頼する不動産査定は有料となります。
不動産鑑定制度は1964年に「不動産の鑑定評価」に関する法律が公布され、施行されました。このような不動産の鑑定制度は世界各国に存在し、アメリカなどの鑑定評価基準を参考にしてこの制度を導入しました。
有料の不動産査定の中でも不動産鑑定士が行うものは、不動産鑑定評価基準に則って行う評価であり、その不動産鑑定の簡素化したものを一般的に「不動産査定」と呼んでいるのです。現在では、「不動産査定」は不動産会社が過去の取引実績を参考に算出するのが一般的になっており、無料でも行われるようになりました。
不動産鑑定(有料):不動産鑑定評価基準に則って行う評価
不動産査定(無料):過去の取引実績と景況をもとに算出した評価
有料の不動産査定が使われる3つのケース
では、どのような時に、わざわざ有料の不動産鑑定を行うのでしょうか。主に下記3つの場合は、不動産鑑定士に不動産査定を依頼します。
- 関係会社間の不動産取引のとき
- 遺産相続で揉めたとき
- 賃料や立退料で揉めたとき
上記3つに当てはまらないケースとは…
不動産を関係会社間で取引する時に鑑定評価書を取得することがあります。なぜならば、関係会社間取引で、親会社の不動産を傘下の子会社に不当な金額で売却すれば、意図的に法人税を安くすることができるからです。
しかしながら、このような不動産売買による脱税行為は認められないため、関係会社間取引であっても適正価格で売買をしなければなりません。
そこで登場するのが第三者の専門家による鑑定評価書です。これは鑑定評価書によって適正価格がいくらなのかを第三者に提示します。
関係会社間取引であっても、不動産鑑定評価書に基づく価格で取引をしていれば、適正な価格の取引として税務署も認めてくれます。このような取引を行う場合は、事前に鑑定評価書を取得し、その価格で売買を行うことになります。
遺産相続で揉めたとき
他にも鑑定評価書は裁判資料などにも用いられます。相続の遺産分割で揉めた時など、適正な不動産価値を出すために鑑定評価書を提出するためです。
賃料や立退料で揉めたとき
賃料や立退料で揉めた時、裁判資料として鑑定評価書を取得することもあります。このように有料の不動産鑑定は、裁判所や税務署に対する証拠資料としての性格を持ちます。
不動産会社が行う無料査定は?全く「査定」の意味合いが異なる
そもそも、なぜ不動産査定が「無料」で出来るのでしょうか?それは不「物件を買ってください」ではなく、「物件を売ってください!!」という姿勢だからです。通常、営業というのはモノを「買ってください」ですが、不動産会社の場合「売らせてください」という営業になります。
そのため、「当社で売ったらいくらで売れますよ」とアピールするのが不動産会社の無料査定になります。通常であれば、「当社で仕事したらいくらになりますよ」と見積を出すケースが、不動産会社の場合「無料」査定を出すことで売り主により良い条件を提示していることになります。
不動産会社によって査定価格が異なるのにはワケがある!
同じ物件でも比較する対象物件の選び方で価格が変わる場合があります。査定価格の算出方法は、公益財団法人が出している「価格査定マニュアル」で定めており、これを利用する不動産会社が多いからです。大手不動産会社は独自で査定マニュアルを作成することもありますが、その場合もこの価格査定マニュアルに準拠していると言われています。
査定の対象と比較する事例物件をどのように選ぶかによって、査定価格は変わってきます。
例えばマンションの場合、同じマンション内で最近の成約事例があれば、どの不動産会社もその事例と比較するはずなので、さほど査定価格に差は出ません。しかし、周辺の似た条件のマンションから選ぶ場合は、最終的には担当者の判断によって左右されます。
また、インターネットで複数の会社に査定を依頼する場合などは、なるべく高く売りたい売主に選んでもらうため、高めに査定するケースが見られます。
査定価格は不動産会社の事情によっても左右される
不動産会社によって査定価格に差が出るのは、比較する事例物件の違いによる理由だけではありません。不動産会社の「事情」によっても変わります。不動産会社の不動産査定は営業の一環です。後々の営業売上のために価格が変動するケースはおおいにあり得るのです。
したがって、不動産会社の行う無料査定は営業的側面を含むものなのです。
無料査定と有料査定の違い
大企業などは大きな不動産を保有していますので、売却前に不動産鑑定士による有料の不動産査定を取得することもあります。 不動産の無料査定と有料査定の比較をまとめると、以下のようになります。
不動産を売却するときには、まず不動産会社に依頼して物件がいくらで売却できるのかるを査定をしてもらうことになります。では、具体的に査定がどのように行われていくのかを項目別に見ていきましょう。
- 不動産価格はどのように査定されるのか
- 対象物件や目的によって査定方法が異なる
- 不動産価格の査定の方法
取引事例比較法
査定する不動産と条件が似ている物件の成約事例を探し、売買された時期や立地条件の違い、物件の個別性などを比較して価格を査定する方法。
原価法
建物について現時点で新築した場合の価格から、築年に応じた減価修正を行って価格を求める方法。
収益還元法
賃貸用不動産などが将来生み出すと期待される収益から価格を割り出す方法。1年間の収益を利回り(還元利回り)で割る「直接還元法」と、一定の投資期間から得られる収益と一定期間後の物件価格を予測して合計する「DCF法」があります。
個人の住宅売却では取引事例比較法や原価法を用いる
項目ごとに点数をつけて評点の合計を計算をします。個人が所有する住宅を売却する場合は取引事例比較法や原価法によって査定されるのが一般的です。
取引事例比較法では、査定する物件と似たような条件の成約事例を探すことからスタートします。最寄駅からの距離や・広さ・間取り、築年数などが似た物件をピックアップし、比較検討することによって概算の売却見積額をはじき出すのです。
次に、査定する物件(査定物件)と比較する物件(事例物件)それぞれについて、項目ごとに点数をつけて合計の評点を計算する方法です。項目とは交通の便や立地条件、住戸位置(マンションの場合)などです。
一方、新築マンションに買い替えるために指定された不動産会社などが査定する場合は、確実に売却できるよう堅実な査定をするのが通常です。つまり売却を希望する人がどのように査定を依頼するかによって、査定価格が左右されるわけです。
不動産の有料査定と無料査定の違いについてのまとめ
高めに査定した不動産会社に依頼すれば、売るのに時間がかかることもあります。
逆に低めに査定した不動産会社に依頼すると早く売れる可能性がありますが、もう少し高く売れるチャンスを失うことになるかもしれません。
査定価格はあくまで目安であり、その価格で売れる保証はないことを知っておきましょう。より、高値で売るためにも売主側もある程度、資産価値に対して知識を持っていたほうがいいでしょう。相場を把握しておくだけでも交渉が有利に進むでしょう。