古民家リノベーションを解説|参考になる事例や物件探しのコツも紹介

ここ数年、住み手のいない“古民家”を再利用する方々が増えてきています。

古民家をリノベーションして、憧れの田舎暮らしを実現できたらいいな
地方再生のために、古民家を活用した宿泊施設を運営したい!
味わい深い雰囲気の、古民家カフェのオーナーになるのが夢…♪

本記事をご覧の方々の中にも、こういった素敵な想いを抱かれている方がいるのではないでしょうか?

ところが、一般的な中古住宅のリフォームとは違い、古民家のリノベーションはそう多くの経験者がいるわけではありません。周りに相談相手がいなければ、不安や疑問を解決するのは難しいですよね。

そこで本記事では、古民家のリノベーションについて詳しく解説していきます。

古民家のリノベーションについてお悩みの方は、ぜひ本記事を参考になさってください。

そもそも「古民家リノベーション」とは?

古民家のリノベーションについて解説するにあたり、まずは基本的なことをカンタンに確認していきましょう。

古民家リノベーションとは、使われていない古民家を買い取り(または譲り受け)、改修工事を行って再び活用できる状態にすることを言います。

古民家の場合、一般的な中古住宅で行うような部分的なリフォームだけでは不十分であることがほとんどで、大規模な改修工事が必要となるケースが多いようです。

「古民家」に定義はあるの?
古民家には明確な定義がなく、一般的には築50年以上が経過した物件のことを指すことが多いようです。
また、一般社団法人全国古民家再生協会では、古民家の定義を『昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法』と定めています。
参考 「古民家」の定義について | 一般社団法人全国古民家再生協会一般社団法人全国古民家再生協会

古民家リノベーションのメリット・デメリット

古民家には、経年によって生まれた特有の魅力がある一方で、古い建物ならではの懸念点もあります。

古民家リノベーションをするうえでのメリット・デメリットは、下記の通りです。

メリット】古民家ならではの趣深い雰囲気の家に暮らすことができる
メリット】シックハウス症候群などの原因となる新建材が使用されていない
メリット】固定資産税が築年数に応じて減額されることがある
メリット】伝統工法ならではの住みやすさがある(風通しが良い、涼しいetc.)
デメリット】家全体の耐震性・耐火性を高める改修工事には高額な費用がかかる
デメリット】冬は寒いため快適に暮らすには断熱性を高める必要がある

古民家リノベーションの一番のメリットは、現代建築には見られない古き良き佇まいでしょう。古民家ならではの温かみある雰囲気は、住まいとしてだけでなく、カフェや宿泊施設としても人気を集めています。

なお、古民家の魅力は見た目だけではありません。伝統工法で建てられた古民家は、先人の知恵がふんだんに詰め込まれた合理的な家として、再び注目を集めています。新建材を使用しないため、アレルギー物質が放出されないことも古民家ならではの利点でしょう。

また、建物に掛かる固定資産税は築年数に応じて減税されるため、古民家の固定資産税は一般的な住宅に掛かる税額よりも安くなる傾向にあります。

一方、古民家リノベーションのデメリットは、耐震性・耐火性などに不安が残ることが第一に挙げられます。また、断熱性も低いことが多いため、冬場は寒く感じるケースが多いです。家全体の耐震性・耐火性・断熱性などを高める場合は、大掛かりなリノベーション工事が必要となります。

「古民家」と「建築基準法」
建築基準法で定められている安全性の基準は、現代建築で用いられる工法を想定して数値が定められています。一方、建築基準法の制定前に建てられた古民家は「既存不適格建築物」と呼ばれており、前提となる工法が異なるため安全性の基準を定めることができません
そのため、古民家リノベーションを行う際は、建築確認申請による安全性の審査がありません。とはいえ、安全性に不安が残るまま古民家を利用するのはリスクが伴うため、何らかの耐震工事を任意で行う方が多いようです。
なお、古民家を母屋として増築する場合は、新たに建てる建物とあわせて母屋である古民家も建築基準法に適合するよう改修する必要があります
参考 建築基準法 | e-Gov法令検索建築基準法 | e-Gov法令検索

古民家リノベーションにかかる費用

古民家リノベーションには、大きく分けて2つの費用がかかります。「古民家の購入にかかる費用」と「リノベーションにかかる費用」です。

下の図は、住宅設備や建材を取り扱っているパナソニックが、実際に行われた古民家リノベーションにかかった費用をまとめたデータです。
古民家のリノベーション費用
引用:Panasonic|古民家再生のリフォーム費用の相場・目安

古民家リフォームに「1,501~2,000万円」をかけた人が20.5%と最も多いことが分かります。次いで多いのは「501~1,000万円」をかけた人で、割合は17.9%。その次は「1,001~1,500万円」「2,001~2,500万円」「3,001万円以上」をかけた人が15.4%と並んでいます。

このデータから分かるように、古民家リフォームにかかる費用は人によって大きく差が出ることがあります。また、思いのほか費用がかかるケースがあることもお分かり頂けたかと思います。

これは、リノベーションする古民家の坪数や老朽化の具合が物件ごとに異なり、結果としてリノベーション工事の規模や内容に差が出るためです。

古民家の購入にかかる費用はピンキリ!
古民家の購入価格は物件によって大きく差が出ることがあり、一般的な中古住宅よりも高値で売買される古民家が存在する一方で、建物には価値がつかず土地代だけで売買される古民家も存在します。
一般的な中古住宅の場合は築年数の経過とともに建物の価値が下がる傾向がありますが、古民家の場合は築年数の経過によって希少価値が高まり、付加価値がつくケースがあるためです。

各地自体が行っている「古民家再生支援事業」

空き家の増加や地方の人口減少を解消するため、自治体が独自の古民家再生支援事業を行っていることがあります。

なお、支援事業の内容は各自治体によって異なるため、古民家がある地域の自治体に古民家再生支援事業があるかどうかは、ご自身で調べて頂く必要があるでしょう。

ご参考までに、各自治体の支援事業にはどのようなものがあるのか、一例をご紹介いたします。

【兵庫県】「古民家再生促進支援事業」
比較的状態の良い古民家が多く残存している兵庫県では、「古民家再生促進支援事業」を実施しています。
この事業を利用することで、古民家の改修工事にかかる費用の一部について助成を受けることができます。
参考 兵庫県/古民家再生促進支援事業兵庫県
【長野県】「ふるさと古民家再生支援事業」
長野県が行っている「ふるさと古民家再生支援事業」は、古民家調査と古民家再生提案にかかる費用を県が負担するものです。
長野県古民家再生協議会に登録されている古民家再生の専門家が、古民家の修繕・再生の可能性や維持管理方法などのアドバイスをしてくださいます。
参考 古民家を活用しようとする方へ ~ふるさと古民家再生支援事業のお知らせ~/長野県古民家を活用しようとする方へ ~ふるさと古民家再生支援事業のお知らせ~/長野県

古民家リノベーションで活用できる補助金制度

その他にも、住宅の「バリアフリー化」「省エネ化」「耐震化」などを促進するために、リフォームやリノベーションで使える補助金制度を各自治体が設けている場合があります。

こういった補助金制度を古民家リノベーションで使えるケースもあるので、適用となる補助金制度がある場合は、積極的に利用すると良いでしょう。

古民家リノベーションの事例

一軒一軒の古民家は異なる個性を持っており、また、老朽化の度合いも異なるため、「どこを活かすか」「どこを直すか」といったことが、物件ごとに変わってきます。
そのため、古民家リノベーションのデザインは百人百様です。

とはいえ、古民家リノベーションを経験している方々がどのようなリノベーションをしているのか、気になるところですよね。

そこで、実際に行われた古民家リノベーションの事例をいくつかご紹介いたします。

古民家リノベーションを行ううえでのヒントにして頂ければと思います。

【事例1.】古民家をシンプルに広々とリノベーション

古民家リノベーションの事例1

引用:SUVACO

こちらは、空き家となった長屋をシンプルにリノベーションした事例です。状態の良い部分のみ、既存の土壁や板貼りを残しているそうです。

伝統工法で建てられている古民家は間取りも複雑でないため、家全体の回遊性と通気性が高く、開放的な雰囲気をもたらします。間仕切りの少ない広々とした空間は、古民家ならではの魅力ですね。

住居として活用するのはもちろん、人が集まるワークショップの会場などにも活用できそうです。

【事例2.】古民家をリノベーションして一棟貸しの旅館に

古民家リノベーションの事例2

引用:SUVACO

こちらは、空き家となっていた京町家を一棟貸しの旅館にリノベーションした事例です。総面積は100㎡以上ある、2階建ての物件です。

こちらの事例では、1階の土間から浴室まで全面的に床暖房を施すリノベーション工事を行っています。

冬の寒さがネックとなる古民家ですが、このように断熱性を高める工事を行うことで、冬も暖かく快適に過ごすことができます

【事例3.】レトロなブックカフェに古民家が大変身

古民家リノベーションの事例3

引用:SUVACO

こちらは、奈良の町家をブックカフェにリノベーションした事例です。

2階部分を思い切って撤去し天井高5.8mの吹き抜け空間にしたことで、落ち着きの中にも開放感のある空間となりました。

坪庭から降り注ぐ光が印象的な窓枠には、もともとアルミサッシが設置されていたため、木製の折れ戸を製作して付け替えたそうです。

リノベーションする古民家の探し方

古民家リノベーションの第一歩は、売りに出されている古民家を探すことから始まります。

ただし、古民家を取り扱っていない不動産屋も多いため、古民家探しは一般的な物件探しと似て非なる部分があります。

そこで、古民家ならではの探し方のコツをご紹介いたします。

古民家探しに特化したサイトを活用しよう

古民家リノベーションを検討中の方々の中には「都心で暮らしながら地方にある古民家を探したい」という方が多いかと思います。
また「できるだけ多くの地域の物件情報を見比べてみたい」と考える方もいるかもしれません。

その場合、現地まで足を運び一軒一軒の古民家を見てまわるのは現実的に難しいですよね。

そこで便利なのが、古民家に特化した物件情報サイトです。

おすすめのサイトをいくつかご紹介いたしますので、ぜひ参考になさってください。

【田舎ねっと.日本】
「日本一親切な田舎暮らし支援サイト」がテーマのこちらのサイトには、北は北海道から南は沖縄まで、全国にある古民家の情報がまとめられています。物件情報が充実しているのはもちろんですが、田舎暮らしに役立つ情報なども掲載されているため、移住を検討されている人にとって何かと重宝するサイトです。
参考 古民家物件情報-古民家大特集- 田舎暮らし物件情報「田舎ねっと.日本」古民家物件情報 -古民家大特集- 田舎暮らし物件情報「田舎ねっと.日本」
【ニッポン移住・交流ナビ】
一般社団法人移住・交流推進機構(JOIN)さんが運営するこちらのサイトは、日本全国の自治体や企業が提供する空き家情報がまとまられたサイトです。物件情報だけでなく、地方における子育てや就職に関する「移住者支援制度」についても特集されているので、慣れない土地での暮らしに不安を抱えている方とって心強いサイトです。
参考 空き家情報/ニッポン移住・交流ナビ JOIN空き家情報/ニッポン移住・交流ナビ JOIN
【古民家住まいる】
こちらのサイトは、日本全国の「古民家に住みたい方」と「古民家を売りたい方」をマッチングする古民家情報サイトです。運営元である一般社団法人住まい教育推進協会さんには、宅建士とあわせて古民家鑑定士や伝統再築士といった古民家に関わる資格を持つ方々が所属されています。
参考 古民家住まいる–古民家情報マッチングサイト古民家住まいる–古民家情報マッチングサイト

古民家リノベーションの依頼先

購入する古民家が決まったら、次は古民家リノベーションの依頼先を決めましょう

リノベーションの依頼先は、主に「ハウスメーカー」「工務店」「設計事務所」の3つに分類され、それぞれの依頼先に良し悪しがあります。

また、業者によってリノベーション費用やデザインの方向性などが異なります。いくつかの業者を比較して、ご自身の求める条件に合った依頼先を選ぶことが大切です。

古民家リノベーションが得意な工務店と設計事務所

なお、当協会(一般社団法人あんしん解体業者認定協会)が運営している情報サイト『コノイエ』では、家づくりのプロのインタビュー記事を多数掲載しています。

古民家リノベーションの実績や経験が豊富な工務店や設計事務所の記事も数多く掲載されておりますので、おすすめの記事を一部抜粋してご紹介いたします。

ぜひ、依頼先選びの参考になさってください。

【株式会社 人と古民家(Hitocomi Design)】
千葉県千葉市にある設計事務所「株式会社 人と古民家(Hitocomi Design)」の代表・牧野嶋さんのインタビュー記事です。

牧野嶋さん

古民家の中には、今では手に入らないような資材などが使われているものもあって、とても貴重な物件も多くあります。そういった建物を次世代まで継承していくためにも、直して終わりではなく、活用方法も考え提案していく必要があると思っています。

スタッフ

古民家の宿を修復し運営されていくために、気をつけているポイントはどのようなところですか?

牧野嶋さん

先ほど言ったように今では手に入らない貴重な資材も多く使われていて、構造的に真似できない部分が多数あります。他にも素材感など、そうした古民家ならではの魅力を残しつつ、そこに現代の快適性能、特に断熱部分や、水廻りなど新築同様に作り直して快適な暮らしができるように設計しています。
参考 株式会社 人と古民家(Hitocomi Design) | コノイエコノイエ
【保川建設株式会社】
千葉県茂原市にある工務店「保川建設株式会社」の社長・保川様のインタビュー記事です。

スタッフ

保川建設株式会社様が手掛けられる家には、どのような特徴があるのでしょうか。

保川社長

家づくりに関わる全ての職人さんが、一緒になって家を造り上げていくことでしょうか。
職人さんと一口に言っても大工さん以外に、左官屋さんや板金屋さんなど、沢山の専門家がいるのですよ。

保川社長

特に古民家再生では、図面通りに現場が進まない時が多いので、その都度みんなで知恵を絞り合っています。
例えば、あるお客さんから、「室内の壁に、竹を節が見えるように埋め込みたい」といったご相談を受けた時の話です。
竹の節と節の間を塗装したり、虫が湧かないように竹を煮沸するなど、一つ一つの作業にとにかく手間ひまを掛けましたね。

スタッフ

保川建設株式会社様では、古民家再生のご依頼が多いのですね。
古民家再生の魅力は何でしょうか。

保川社長

古民家を再生した家は、新築では絶対に真似できない、深い味わいがあります。
職人さんの細やかな技術が、古民家の造形に“静かな美しさ”すら与えています。
参考 保川建設株式会社 | コノイエコノイエ
【木の家設計室アトリエ椿】
千葉県柏市にある設計事務所「木の家設計室アトリエ椿」の代表・笠原様のインタビュー記事です。

スタッフ

笠原様は古民家のリノベーションのお仕事もされているんですよね。

笠原様

そうですね。リノベーションのお仕事は埼玉の設計事務所で修行していた時からずっと取り組んでいます。築30年程度の比較的新しい家から、築100年を超える古民家まで、いろいろな家の再生のお仕事をさせていただいています。

スタッフ

リノベーションのお仕事ならではの大変なことはありますか?

笠原様

例えば古い民家を再生する時に、お客様の思い入れが強い場合はそういう思いをなるべく汲み取るようにしています。大きな柱とか、なるべく原型は留めるようにしながら、暮らしやすくリノベーションすることを心がけていますね。そのためには、古民家ならなおさら腕の良い大工さんじゃないと難しいところも多くて…。実際にそういう大工さんの作業を見ていると、あまりに素晴らしくて惚れ惚れしちゃいます。
参考 木の家設計室アトリエ椿 | コノイエコノイエ

まとめ

本記事では、古民家のリノベーションについて詳しく解説してきました。

古民家リノベーションは経年による魅力が数多くある一方で、一般的な中古住宅のリフォームと異なる点がいくつも存在します。

古民家ならではの魅力を残しつつも安全に再利用するためには、正しい知識を持つ専門家にリノベーションを依頼することも大切です。

よろしければ、『コノイエ』で紹介している家づくりのプロのお話も参考になさってくださいね。

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