相続における葬儀費用の控除とは?葬儀の種類と控除の範囲

大切な方が亡くなると、気持ちの整理もつかないままに、葬儀の案内や準備を限られた期間で進めていきます。葬儀や相続等の公的な手続きを行う他にも、葬儀にかかる費用の負担も必要になります。

葬儀にかかる費用は借金等のような債務ではありませんが、相続においては債務と同様に相続財産から差し引くことが出来ます。葬儀に関わる費用の、どこまでが相続財産から控除されるのか疑問に感じる方も多くいらっしゃいます。

今回は葬儀にかかる費用について、また相続に関する葬儀費用の控除についてご紹介します。

葬儀にかかる種類と費用

葬儀は種類や規模によって、内容や金額も大きく変わります。初めて身内の方の葬儀を執り行う場合は、葬儀の種類や費用の内訳を理解しておくと安心です。

相続財産から控除される葬儀費用の前に、主な葬儀の種類と費用に関して見ていきましょう。

葬儀の種類

近年葬儀のかたちは多様化しており、様々な種類の葬儀があります。生前からご自身の葬儀を決めてる方もいれば、突然のことでご遺族が葬儀に関わる全てを取り決める場合もあります。葬儀の種類としては、主に次の葬儀のかたちが挙げられます。

一般葬
遺族や親族以外にも、親しい方や知人・職場関係の方で見送る従来の葬儀です。
社葬・合同葬
企業や団体が主体となって行う葬儀です。親族や親しい方だけでなく、会社の関係者も多く出席するため、規模の大きな葬儀となります。
家族葬
主に身内だけで執り行う、小規模な葬儀です。遺族の想いを反映しやすいこともあり、近年増加傾向にあるかたちです。
一日葬
通夜式を執り行わず、火葬と告別式のみを1日で行う葬儀です。
直葬
葬儀を行わずに、火葬だけを行うかたちです。

昔は通例の葬儀を好む傾向にありましたが、近年では故人や家族にとって一番良いと考えられる方式を選ぶ方も増えています。上記以外にも自由葬やお別れ会などの方式もあります。

葬儀にかかる費用

葬儀についてのアンケート調査によると、葬儀費用の全国平均は約200万円と言われています。地域や葬儀の規模によっても相場は大きく変わりますが、葬儀には大きな金額が必要になります。

葬儀に関する内訳の費用は、主に次の3種類に分けることが出来ます。

葬儀費用の種類
①葬儀一式の費用
②飲食接待にかかる費用
③寺院費用

葬儀費用の半数以上を占めるのが葬儀一式の費用であり、一般的に葬儀全体の費用における6割程度を占めます。葬儀一式は主に、祭壇・棺桶・寝台車など、通夜・告別式・火葬に必要な費用です。人物や場所にかかるお葬式本体の費用のことで、主に葬儀社ごとにセットプランが組まれています。

飲食接待費用とは、通夜や告別式に参列して下さった方に振舞う、飲食費や人件費のことです。参列された人数によっても大きく変動があり、葬儀費用全体の約2~3割を占めます。

残りの2~3割を占めるのが寺院費用です。宗教等によっても大きく異なりますが、寺院の僧侶による読経等の御礼として渡す費用のことです。葬儀に必要な3つの費用は、葬儀会社や規模・葬儀の種類によっても変動するため、見積りをよく確認したうえで葬儀を執り行います。

葬儀費用の注意点

「葬儀費用が初めに聞いていた金額と大きく違っていた」実際の請求金額に驚き、葬儀社とトラブルになるケースも少なくありません。特に葬儀社のHPにある葬儀費用一式◯万円といった記載を見ると、葬儀の全ての金額が含まれているように感じてしまいます。

しかし、葬儀費用一式にどのような内容が含まれているかは、葬儀社によっても大きく異なるため、事前の確認が重要です。初めの金額と実際の請求金額に大きな幅があるのは、葬儀社にもよりますが一式の費用に別途費用や実費費用等の項目が加わることで金額が上がってしまうためです。

葬儀費用に関してトラブルを防ぐためにも、可能なら2社以上から見積もりをとった上で、何に幾らかかるのが項目ごとに金額が詳しく記載されているかどうかを確認しましょう。特に飲食接待費などが「別途」とだけ記載されていた場合、実費としていくら掛かるのか見積もりを再度お願いすることをお勧めします。

葬儀社を比較する場合は一式の費用だけでなく、詳しく見積もり内容を確認することで、可能な限り葬儀後のトラブルを防ぎましょう。

相続財産から控除される葬儀費用

相続税の計算における第一段階として、課税価格の計算を行います。課税価格は相続及び遺贈による財産に、みなし取得財産を足したものから、非課税財産・債務・葬儀費用等の金額等を差し引いて算出します。

債務等のマイナスの財産の他にも、相続財産の価額から葬儀費用は差し引くことが出来ます。相続財産から差し引くことの出来る葬儀費用ですが、計算の際には葬儀費用として控除可能な費用と不可能な費用があります。どのような費用が控除できるものかを確認しましょう。

控除できる(差し引ける)葬儀費用

相続税の計算において、控除が認められる葬儀費用としては次の費用が挙げられます。

・火葬、埋葬、納骨などに要した、葬式及び葬送にかかった費用
・遺体の捜査、遺体又は遺骨の運搬に要した費用
・お通夜など葬式に伴って生じた費用で、通常葬式にかかせないと認められた費用
・葬式において納めた金品(お布施や読経料など)のうち、被相続人の財産や職業に相当と認められた費用

主に上記の4つの費用が、差し引くことが可能な葬儀費用です。差し引くことが出来る葬儀費用は幾らまで、といった厳密な金額はありませんが、著しく高額な葬儀費用の場合は例外となることもあります。

控除できない(差し引けない)葬儀費用

葬儀費用と言っても、葬儀に関わる費用には様々なものがあります。葬儀費用として相続財産から差し引くことが出来ない費用は、主に次のものが挙げられます。

・香典返礼のために要した費用
・墓地や墓碑の購入に要した費用、及び墓地の借り入れ料
・初七日や四十九日などの法事に要した費用

上記の3つの費用は、葬儀費用として含まれないものです。宗教等によっても違いますが、葬儀のあとに行われる初七日や四十九日などの法要は、遺産相続から差し引くことの出来ない費用です。

葬儀に要する費用は様々なので、葬儀費用として含まれるかどうか迷う場合も多くあります。「これは控除できないだろう」と思っていても、専門家に相談すると含まれる費用であった、という可能性もあるので、葬儀に要した領収書はまとめて保管しておきましょう。領収書が無い場合には、

・支払日
・支払い目的
・支払先と連絡先
・金額

などを明記して、忘れないように全て保存しておきましょう。お布施などは控除として認められていますが、領収書が発行されないため、必要な内容を正しく明記して残しておきましょう。

葬儀費用以外に控除されるもの

相続によって得た財産は課税の対象となりますが、財産のうちで一定額が非課税と枠を設けられている非課税枠や、例外として相続税がかからない財産(非課税財産)があります。

相続税を計算する際に、葬儀費用以外にも課税対象から除かれる財産にはどのような種類があるのか、確認しておきましょう。

みなし財産の非課税枠

死亡保険金や死亡退職金など、人が死亡したことで生じる財産のことをみなし財産と呼びます。本来は固有の財産ではありませんが、死亡保険金や死亡退職金は相続税法のうえでは財産とみなされて課税の対象となります。

しかし、全額が課税対象となるのではなく、一定の金額が課税対象外となるよう決まりが設けられています。死亡保険金及び死亡退職金について、500万円×法定相続人の人数が非課税枠と定められています。

法定相続人に設けられている非課税枠なので、内縁の配偶者などには非課税枠の適用はされません。例えば法定相続人が妻と子の合計2人だった場合、500万円×2=1,000万円が非課税限度枠です。

非課税財産

金銭的な価値があり財産と評価の出来るものであっても、社会的考慮や性質により相続税のかからない非課税財産があります。非課税財産には次のものが挙げられます。

・日常的に礼拝しているもの(墓地・墓石・祭具・神棚・仏壇など)

・期限内に寄付したお金(相続や遺贈によって得た財産で、国や地方公共団体・公益法人などに期限内に寄付したお金)

・宗教や公益を目的とした事業を行うもので得た財産で、公益事業用であることが確実であるもの。

・個人経営の幼稚園事業における財産で、一定の条件を満たしたもの。

・心身障害者共済制度により定められた給付金を得る権利。

上記にあるように、日常で礼拝しているものは相続税がかかりませんが、投資対象や商品として持っているものは除きます。

まとめ

葬儀の種類と費用、相続における葬儀費用の控除内容に関してご紹介しました。葬儀について準備をされる方も増えていらっしゃいますが、多くの方が突然のことに胸を痛めながらも事務的な手続きを期限内に行うことになります。

葬儀にかかる費用は規模や形式によっても大きく異なりますが、「小さな葬儀だから費用が抑えられる」とは限らず、昔ながらの葬儀より負担が大きくなってしまう場合もあります。

亡くなった方と見送る方の思いに添いながら、費用の負担によるトラブルを防ぐためにも、葬儀における費用について知っておくことが重要です。葬儀社の見積内容をよく確認して、一式の中に何が含まれているかチェックしておきましょう。

また、相続財産から控除出来る葬儀費用と、含まれない費用についても見ていきました。相続税の計算の際に必要になるため、葬儀に要した費用については、領収書と領収書がないものは控えを忘れないように一式まとめておきます。相続には多くの手続きがあるため、後から困らないように手順を確認して書類をまとめておくことをお薦めします。