葬式の業者選び。トラブル回避のための注意点とは?

大切な方がお亡くなりになると、準備をする余裕もなく急遽行わなければならないことが多くあります。葬式に参列した事はあってもご自身で執り行うことは滅多にないため、葬式ではどのような業者があり、どう選べば良いのかお迷いになる方も多いのではないでしょうか。

急なことで心身も疲れていると、何となく手近な業者を選びたくなるかもしれません。しかし、葬式によってトラブルが起きると、最後のお別れに沢山の後悔が残ってしまいます。

トラブルを防ぐためにも、限られた時間の中で基準をもって業者を選ぶことが大切です。ここでは、葬式の業者の種類と葬式において知っておきたいこと、そして業者選びの注意点を見ていきましょう。

葬式業者の種類と内容

葬式を執り行うことは長い人生でも滅多にないことで、且つ葬式の業者(葬儀社)は数多く存在しています。どのような種類の葬式業者があり、業者は葬式においてどのような事を任せられるのでしょうか。

葬式業者の種類

葬式業者を営むために明確な許可は無いため、正確な葬式業者の数は把握出来ませんが、約4,000社以上の葬式業者が存在していると言われています。

新規参入も出来やすい業界であり、許認可制では無いことから、少人数の業者も多くあり参入も撤退も激しいのが現状です。葬式業者としては、主に次の種類が挙げられます。

①葬祭専門の葬儀社…全国に店舗のある葬儀社から地域に密着した業者まであります。
②JA/生協…JAや生協の組合等を対象に、JAや提携葬儀社を通じたサービスを行います。
③自治体…自治体によっては葬儀業者と提携して、市民葬や区民葬を設けています。
④互助会…掛け金を積み立てて、葬儀のサービスを行う仕組みです。
⑤異業種/葬祭周辺業者…ホテルや鉄道会社などの異業者や、墓石会社や仏壇仏具業者などの周辺業者により行われる葬儀です。

大きく分けて上記の5つの業者が存在します。病院から指定される業者に決める方もいれば、ご自身で業者を選択する場合もあります。どの種類の業者が必ず良いとは言い切れないので、「葬式の規模とどのような内容にしたいのか」を考えた上で、業者ごとの対応を比べるて判断しましょう。

葬式業者が行う内容

どの葬式業者に依頼するのかによって異なりますが、主に業者は次のような事を行います。

・故人の搬送と安置、納棺
・故人の体のケア(ドライアイス等)
・霊柩車の手配
・枕飾りや祭壇の用意
・供物や供花の用意
・遺影、棺、死装束の手配
・通夜及び告別式の設営
・料理、返礼品の手配
・火葬場の手配
・諸手続き(死亡届の提出/火葬許可の申請)

葬儀業者が行う内容は、業者の種類だけではなくどのプランを選ぶか等によっても大きな違いがあるります。そのため「この内容はやってくれるはず」と思わずに、何を幾らで行ってくれるのかを必ず確認しましょう。

葬式業者選びの注意点

身近な方がお亡くなりになると、急なことで冷静な判断が出来なかったり、業者を選ぶ余裕が無い方も多いかもしれません。また、お亡くなりになる前に葬式業者を探すのは、不謹慎だと考える方もいらっしゃいます。

しかし、葬式業者を選ばなかったために、最後のお別れが満足に出来なかったというケースが、メディア等でも取り上げれれています。

「見積もりだと葬式一式50万円だったのに、実際の請求額は120万円と倍以上かかった」
「故人とゆっくりお別れの時間を過ごしたかったのに、業者が小さな葬式だと利益が少ないからか、余りにもぞんざいな扱いを受けた。」

業者とのトラブルを防ぐためには、どのようなトラブルがおき易いのかを知ったうえで、業者選びの判断基準を持つことが大切です。

葬式における業者によるトラブル

葬式における業者とのトラブルで多いのが、見積もりと請求金額の違いによるトラブルです。「葬儀一式○万円」という案内に安心して申し込んだのに、実際の請求では「追加費用」として何倍もの請求書が送られたきた、というケースです。

一式に何が含まれているのかの事前の説明や詳しい見積書もなく、請求書をみて愕然とする方も少なくありません。また、直葬や家族葬等の小さなお葬式を考えていたのに、業者の対応があまりにも悪く故人とのお別れを満足に出来なかった、と後悔が残るケースもあります。

お亡くなりになる前に、「家族葬をあげて欲しい」「お父さんと同じ葬儀業者さんにお願いしてね」などと故人の願いがはっきりしていたら希望に合わせることも出来ますが、殆どの方が急なことで何の準備もなく手続きに追われることになります。

急なことだとしても、葬式業者選びに判断基準を持つことでトラブル防止に繋がります。

病院指定以外の葬式業者を選ぶ方法

予め葬式業者を選んでいる場合を除いて、多くは病院に薦められた葬式業者を選ぶことが多いのではないでしょうか。もちろん病院指定の葬式業者が悪い訳ではありませんが、他の葬式業者にお願いすることも出来ます。

急なことで葬式業者を選ぶ余裕がない場合は、搬送や安置を葬式業者にやってもらった後、契約を交わす前に他の業者に葬式を依頼することも可能です。はっきりと葬式については他の葬式業者に頼むことを伝えましょう。

安置をしている間に、電話等で数社の葬式業者に「書面で見積もりをお願いしたいです」という旨を伝えると、常に緊急な事態に備えている葬式業者ならすぐに見積書を送ってくれます。業者選びの判断基準を持って、限られた時間ではありますが葬式業者をしっかりと見極めましょう。

業者を選ぶためのポイント

葬式業者を選ぶためには、いつくかのポイントを確認することが必要です。

・葬式の規模とスタイルを考える
・数社から見積書を取りよせ比較する
・実店舗が存在するか、会社の所在地を確認する
・電話と実際に会うことで、葬式業者の対応を確認する
・割引や会員には注意する
・専門用語ばかり多様して、不安を煽ったり一方的に話す業者には注意する
・相談をよく聞いてくれて、決断をすぐに迫らない業者か確認
・小さな葬式を否定して、オプションをつけてこようとしないか確認

葬式の規模とスタイル

近年では一般葬という従来のスタイル以外にも、家族葬や直葬を選択する方も増えています。葬式を家族だけで行うのか・親族や親しかった方を呼ぶとしたらどの範囲まで声をかけるのかによっても、規模やスタイルは異なります。

葬式業者ごとにプランが設けられていることが多いですが、葬式のスタイルによっても選択する葬式業者が変わることもあります。どのような葬式にするのか決まっていなかったために、葬式業者の言うままの内容にして後悔するケースもあります。

また、一般葬の場合と火葬だけを行う場合では業者の利益も変わります。小さなお葬式をすることを伝えると態度が変わる業者や、「もっと盛大な葬式にしないと故人の供養にならない」等と言ってプランを上げようとする業者も存在します。

どのスタイルや規模の葬式が正しいという事は無いので、遺族や親族でよく相談したうえで決定しましょう。プランによって態度が余りにも変化したり、無理やり値段を上げようとする業者を選ばないためにも、業者を比較して選ぶことが大切です。

葬式業者の比較

どこの葬式業者に依頼するか分からない場合は、インターネットで検索する場合も多いのではないでしょうか。ネットで検索する際に気をつけたいのが、現在住所が存在するかどうか・ネットでの見積りだけではなく電話をかけて見積りを取ることです。

仲介業者であったり、最近開業して店舗が無い業者もあるので、業者の住所は確認しておきましょう。また、ネットで大凡の見積りを計算出来るサービスもありますが、実際の対応が判断できないため、電話をかけて3社程度の業者に見積りを依頼しましょう。

一社だけだと金額の目安も判断しづらく、直接会ってしまったあとに他の業者を探すと時間のロスに繋がります。時間は限られていますが、処置が適切なら数日後に葬式を行うことも出来るので、一度一呼吸おいて冷静になって業者探しをすることが大切です。

見積書と説明

見積りは口頭だと後からトラブルになるので、必ず書面で受け取りましょう。「葬式一律○万円」と記載があっても、業者ごとにパックの内容に何が含まれているのかは異なります。

特に一式の内容に飲食費は含まれていないことが多く、一番低いプランの費用をパックにしていて、後からランクを上げることもあります。葬式一式◯万円という記載ではなく、一見細かい見積り書のようでも、「祭壇一式○万円」等と費用の中で括って提示していることもあります。

見積り書では、何に幾らかかるのか・一式には何が含まれるのか・追加費用を含めて実費で幾らかかるのか、を確認しておきましょう。

セールストークが上手く、「小さな葬式では供養にならない。一般的にはこのぐらいの葬式はやるべき」と言って、希望や相談を受け入れずに利益をあげようとする業者もいます。

1日で決める必要はないので、相談を聞き入れず急かしてくる葬式業者は選ばないようにしましょう。また、割引や会員になるとサービスがつく場合は、全てが悪い訳ではないですが過度なケースは注意が必要です。見積りの総額で決めずに、どの内容が含まれているのか、そして業者の対応を見極めましょう。

葬式において知っておきたい形式と費用

葬式業者を選ぶうえで、葬式について知っておくことで余分な費用を防ぐことが出来ます。

葬式のスタイル

昔は一般葬と呼ばれる、親族や親しかった方を呼んで通夜・告別式を執り行うスタイルが多く見受けられました。しかし、近年では小さなお葬式を希望するケースも増えて、葬式のスタイルは変化しています。

■一般葬…遺族や親族以外にも、親しい方や知人・職場関係の方で見送る従来の葬儀です。
■社葬/合同葬…企業や団体が主体となって行う葬儀。親族や親しい方だけでなく、会社の関係者も多く出席するため、規模の大きな葬儀です。
■家族葬…身内だけで執り行うことが多く、家族以外を呼ぶ場合でも小規模な葬儀です。遺族の想いを反映しやすいこともあり、近年増加傾向にあるかたちです。
■一日葬…通夜式を執り行わず、火葬と告別式のみを1日で行う葬儀です。
■直葬…葬儀を行わずに、火葬だけを行うかたちです。

葬式のスタイルによって金額は変動しますが、注意したいのが小さな葬式は必ず低価格とは限らないという事です。例えば、身内だけで家族葬を行った場合でも、祭壇や会場を盛大にしたり香典が無いことが理由で、却って負担が大きくなる場合もあります。

また、上記のように葬式の形式が呼ばれることが多いですが、明確な定義は無いので葬式業者ごとに内容は変わります。どの規模で・どのような内容で・予算は幾らで行うのか、三点を明確にして葬式のスタイルを決めることが重要です。

葬式にかかる費用

葬式にかかる費用は、主に次の項目に区分出来ます。

①葬儀の基本費用
②会場の使用費用
③火葬費用
④飲食接待にかかる費用
⑤寺院への費用

葬式のパック料金には、業者によって葬儀の基本費用のみ含む場合もあれば、会場費や火葬費も含まれている場合もあります。飲食接待費は含まれないことが殆どなので、会場で行う場合には値段×想定人数で計算しましょう。飲食は必ず同じ会場で行う必要は無いため、どこで行うこかを決めておきましょう。

上記が主な費用ではありますが、「葬儀の基本費用◯万円」では内容も中身も不明確なので、「寝台車○万円」「ドライアイス○万円」等と基本に含まれる内容と、それぞれの値段を明確にしたうえで他業者との比較を行います。

通夜や告別式を行わずに火葬のみを行う直葬と、一般葬や家族葬では大きく費用が異なります。地域によっても異なりますが、一般葬の相場は200万円と言われていますが、直葬は上記の全てはかからないので20万円~30万円が相場です。

まとめ

葬式業者の種類と内容、葬式におけるトラブルと業者選びの基準について見ていきました。準備の間もないため、紹介された業者や身近な業者に決めてしまいがちですが、あとから後悔することも少なくありません。

葬式に備えることを不謹慎と考える方もいらっしゃいますが、準備していたからこそ満足なお別れが出来ることもあります。準備の期間が無い場合には、気が動転しいるからこそ、一呼吸おいて冷静になる事が大切です。

病院にいる数時間の間に、数社から見積りをとることも可能です。また、ドライアイス等で正しく処置をすれば、死後4日~5日経過した後に葬式を行うことも出来ます。言われるがままに葬式を執り行いトラブルにならないように、焦らず葬式業者を選びましょう。

葬式業者を選ぶには、葬式のスタイルと規模を決めて、判断基準を持って葬式業者を選びます。葬式業者の対応と見積り書の内容を、数社の業者で比較することをお勧めします。ご自身も参列して下さった方にも満足のいくお別れをして頂けるように、出来る限り事前に葬式の知識と情報を蓄えておくこと、そして葬式業者を判断基準を持って選ぶことが大切なのではないでしょうか。