特定建設作業とは?解体工事に必要な特定建設作業の届出

解体工事の現場を通りかかった際、大きな音や振動を感じた経験のある方も多いのではないでしょうか。工事現場周辺の生活環境を守るため、解体工事中に発生する騒音・振動の大きさや作業時間には規制が定められています。

解体工事の内容によっては、著しい騒音や振動を発生し法令で決められた条件に該当する、特定建設作業という作業を行うケースがあります。特定建設作業を行う場合には規則を守り、必要な届出を行う必要があります。

ご自身の解体工事がどのような内容になるのかをよく理解した上で解体工事を依頼するためにも、騒音や振動に関する特定建設作業について知っておきましょう。今回は特定建設作業の内容と必要な届出についてご紹介します。

特定建設作業とは?決まりを知っておこう

建設・解体工事の中で著しい騒音や振動を発生する作業であり、法令で定められたものを特定建設作業といいます。

特定建設作業を伴う工事を行うにあたり、騒音や振動が何デシベルまでという基準や、作業を行う時間が決められています。作業の種類と同様に地域により異なるので、東京都を例にとってご紹介していきます。

騒音・振動の規制基準

特定建設作業を伴う工事をする時は、騒音や振動の基準が法令により定められています。東京都においては、騒音に関しては85デシベルが基準値です。くい打ちやブレーカー作業等の振動に関しては75デシベルが基準値と定められています。

デシベルでの表記だと、どの程度の騒音か想像がつきづらいかと思います。一般的に日常生活の中で不快に感じるのが60デシベルと言われています。70デシベルが掃除機の音や街頭の騒音、80デシベルがピアノの音や救急車のサイレンの音程度です。

振動に関しては、65~75デシベルが震度2位で僅かに揺れを感じるレベルとされています。特定建設作業をしている間は、ご近所の方が掃除機の音やピアノの音位の騒音を感じる可能性があります。

このように解体工事がどの位の音や振動か想像すると、特定建設作業で決められた基準を守っていたとしても、相当の騒音や振動をご近所の方が感じることが分かります。もしご自身の建物の解体工事が特定建設作業を伴う場合は、トラブルを避けるためにもご近所への配慮をすることが重要です。

作業時間の制限

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建設作業では特定の場合を除いて作業時間が制限されています。東京都の1号区域では午前7時から午後7時まで、1日10時間以内と決められています。また同じ場所での連続した作業は6日以内で、日曜と休日の工事は禁止されています。一方、2号区域では午前6時から午後10時まで、1日14時間以内と決められています。

同じ東京都でも、区域によって作業時間は異なります。そのためご自身の建物の解体工事がどの区域かを理解し、工事時間がきちんと守られているか確認することをお勧めします。

特定建設作業の法令

全ての解体工事において特定建設作業の届出をする必要はなく、騒音規制法と振動規制法に定められた条件に該当した場合に、特定建設作業の届出の義務があります。

どのような作業内容か・どのような重機を使用するかで、地域によって特定建設作業の届出が必要か否かが異なります。

ここでは東京都を例にとって、騒音規制法と振動規制法において、それぞれどのような工事をした場合に特定建設作業の届出が必要になるかをご説明します。

ご自身の解体工事の内容について業者から説明を受けるときに、もし下記のような作業の説明があれば、特定建設作業に該当する可能性があります。

騒音規制法

騒音規制法においては、次の8つのうちいづれかの作業を行った場合に、特定建設作業に該当します。

1,くい打機(もんけんを除く。)、くい抜機又はくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く。)を使用する作業(くい打機をアースオーガーと併用する作業を除く。)

2,びょう打機を使用する作業

3,さく岩機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)

4,空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであって、その原動機の定格出力が15kw以上のものに限る。)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く。)

5,コンクリートプラント(混練機の混練容量が0.45m以上のものに限る。)又はアスファルトプラント(混練機の混練重量が 200㎏以上のものに限る。)を設けて行う作業(モルタルを製造するためにコンクリートプラントを設けて行う作業を除く。)

6,バックホウ(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するもの※1を除き、原動機の定格出力が80kw以上のものに限る。)を使用する作業

7,トラクターショベル(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するもの※1を除き、原動機の定格出力が70kw以上のものに限る。)を使用する作業

8,ブルドーザー(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するもの※1を除き、原動機の定格出力が40kw以上のものに限る。)を使用する作業

引用:騒音規制法

振音規制法

騒音規制法においては、次のような作業を行った場合に特定建設作業に該当します。

1,くい打機(もんけん及び圧入式くい打機を除く。)、くい抜機(油圧式くい抜機を除く。)又はくい打くい抜機(圧入式くい打くい抜機を除く。)を使用する作業

2,鋼球を使用して建築物その他の工作物を破壊する作業

3,舗装版破砕機を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)

4,ブレーカー(手持式のものを除く。)を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)

引用:振動規制法

指定建設作業

解体工事において著しい騒音や振動を発生する作業は法令ごとに決まりがあります。

騒音規制法および振動規制法では特定建設作業と定め、環境確保条例では指定建設作業と定めています。東京都の環境確保条例が定めている指定建設作業の内容は以下の通りです。

1,くい打機(もんけんを除く。)、くい抜機若しくはくい打くい抜機(加圧式くい打くい抜機を除く。)を使用する作業又は穿孔機を使用するくい打設作業

2,鋲打機又はインパクトレンチを使用する作業

3,さく岩機又はコンクリートカッターを使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)

4,ブルドーザー、パワーショベル、バックホーその他これらに類する掘削機械を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)

5,空気圧縮機(電動機以外の原動機を用いるものであって、その原動機の定格出力が15Kw以上のものに限る。)を使用する作業(さく岩機の動力として使用する作業を除く。)

6,振動ローラ、タイヤローラ、ロードローラ、振動プレート、振動ランマその他これらに類する締固め機械を使用する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限る。)

7,コンクリートプラント(混練機の混練容量が0.45m?以上のものに限る。)又はアスファルトプラント(混練機の混練重量が200kg以上のものに限る。)を設けて行う作業(モルタルを製造するためにコンクリートプラントを設けて行う作業を除く。)又はコンクリートミキサー車を使用するコンクリートの搬入作業

8,原動機を使用するはつり作業及びコンクリート仕上作業(さく岩機を使用する作業を除く。)

9,動力、火薬又は鋼球を使用して建築物その他の工作物を解体し、又は破壊する作業(作業地点が連続的に移動する作業にあっては、1日における当該作業に係る2地点間の最大距離が50mを超えない作業に限り、さく岩機、コンクリートカッター又は掘削機械を使用する作業を除く。)

引用:環境確保条例の指定建設作業

解体工事現場周辺の環境保全

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特定建設作業は著しい騒音・振動が発生するめ、近隣住民や周囲の方の生活に支障をきたす恐れがあります。そのため工事に関する決まりや防止対策が市区町村から呼びかけられています。

特定建設作業の工事で発生する振動・騒音・粉じんを軽減させるため、防音塀や防音シートの設置などに努めるよう、各地域の特定建設作業に関するホームページなどに記載されています。また防止対策だけではなく、周辺住民への早期の解体工事内容の充分な説明や、周辺住民からの苦情が起きた場合の対策が不可欠と記載されています。

もしご自身の解体工事が特定建設作業に当てはまる場合、防止対策を行っているか・周辺住民の説明はどのような流れかについて、解体業者に予め質問しておきましょう。

特定建設作業届出の申請方法

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解体工事が特定建設作業に該当した場合、届出をすることが義務づけられています。一般的に届出は解体業者が行うものですが、念のため届出の方法を知っておくと安心です。

特定建設作業の届出の書式や方法は地域によって異なります。ここでは、東京都の杉並区を例に特定建設作業の届出の流れに関して見ていきましょう。

届出者と期間

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届出を行うのは、解体工事を施行しようとする元請業者です。届出の提出は特定建設作業開始の7日前が期限です。届出日及び工事開始日は含めず中日7日間なので、例えば12月18日が作業開始日の場合は、12月10日が提出日です。

期限までに必要な書類を、杉並区役所の環境課公害対策係に提出します。各市町村長に届出をすることが義務付けられており、地域により多少違いますが7日前が提出期限の地域が多いです。特定建設作業の届出が遅れた場合や、虚偽の届出をしたものは罰則規定があるのでご注意下さい。

特定建設作業の届出に必要な書類

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杉並区の場合は、杉並区公式ホームページの申請書配信サービスから、特定建設作業の届出をダウンロードします。下記からHPを開いて頂くか、「杉並区+特定建設作業+届出」と検索すると一覧に杉並区のHPが出てきます。

杉並区:特定建設作業実施届出

振動規制法で定められた解体工事の作業を行うときは振動に関する届出の書類と添付書類を、騒音規制法で定められた作業を行うときは振動に関する届出の書類と添付書類を記入します。

杉並区の特定建設作業実施届出のページを下にスクロールさせると、申請書類の関連ページに移動します。

赤枠の「特定建設作業実施届出書」をクリックして、提出内容を確認のうえ期限内に杉並区環境部環境課公害対策係に提出します。

届出をすれば解体工事を行うことはできますが、忘れてはならないのが近隣住民への配慮です。過去に解体工事の騒音が発端で裁判に発展したケースも見受けられます。

周囲の方の状況や関係性によっても異なりますが、解体工事では近隣の方へ振動や騒音によるストレスをかけていまします。解体工事の前にしっかりと近隣挨拶を行い、振動・騒音・粉じんを軽減させるための措置を取ってくれる解体業者を選びましょう。

特定建設作業についてのまとめ

特定建設作業は一般の解体工事よりも、激しい騒音や振動が発生し、周囲の住民からの苦情が起きやすい作業です。ご自身の解体工事が特定建設作業に当てはまるか、ご自身では判断が難しいと思います。解体業者との顔合わせの時に「建物を壊す時どのような工事になりますか?特定建設工事に当てはまりますか?」と聞いてみましょう。

こういった質問をすることで、特定建設作業かどうかが分かるだけでなく、知識があると業者さんに思われて、工事内容に関して専門的な説明をしてくれる可能性が高まります。解体工事が実際にどのような工事になるかを理解することで、トラブルになるかどうかある程度想定することが出来ます。

特定建設作業に該当した場合は、防音・振動を軽減するための防止対策と、周辺住民への十分な説明を行うよう市区町村のホームページに記載があります。依頼する解体業者が工事において十分な対策と規定を守るよう、特定建設作業の知識をつけたうえで、周囲への配慮を心がけることでご近所トラブルを未然に防ぎましょう。

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