木造住宅の解体工事の手順

一口に取り壊しと言っても、家の構造・状態などによって工事の手順や費用は変わってきます。

例えば同じ立地条件・築年数・大きさの家屋だったとしても、それが木造家屋なのか鉄骨家屋なのか、RC造家屋なのかによって工事の手順も大きく異なります。

なぜ異なるのか?その理由は使用されている建築材料の違いにあります。

建築材料が違えば壊しやすい・壊しにくいなどの差が生まれますし、また、出てくる産業廃棄物の種類も異なるため、処分方法などによって手順が変わってくるのです。

今回は木造家屋にフォーカスを当て、どのような手順で撤去工事が行われるのかを詳しく見ていきましょう!

まずは解体工事の前に必要な手順から

解体工事の施工業者を決め、いよいよ解体工事を開始する……その前に!工事を依頼した施主にも、施工業者にも事前にやらなくてはいけないことがあります。

家屋とその周辺の事前調査

家屋と周辺の事前調査は、撤去工事の施工業者が工事の前に行います。

依頼主である施主とお話を進めていても、実際に家屋の様子を見ておかないと、施工中に予定外の作業が生まれ工事予定期間を大幅に過ぎてしまったり、高い追加費用を請求してしまったりするかもしれません。

また、近隣住宅の様子もきちんとチェックしておき、例えば隣家との距離が近すぎる家屋の工事の際はどこまでが隣家の敷地で、この木はどちらの所有物なのか……などを調査することで、近隣の方々とのトラブルを回避でき、スムーズに施工することができます。

事前調査には、施主も付き添った方が良いでしょう。
実際に現場を見てもらいながら作業中に注意してほしい点や壊してほしくないものなども指示することができますので、のちのトラブルを防ぐためにも必要です。

近隣の様子についても施主側の方が理解できているはずですから、事前に伝えておくと安心です。

設備の撤去・予約

解体工事が始まってしまう前に、電気・ガス・水道などのそれぞれの業者に連絡を取り、停止する日を依頼し、契約を解除しておきましょう。

停止する日程については、解体工事の作業中に必要になる可能性もあります(主に水道など)ので、停止依頼をする前に業者に確認を取った方が良いでしょう。

家屋の取り壊しの前に、電気・電話は電柱からの引き込み部分を取り外したり、ガスは配管のカット作業が行われたりと、事前の撤去作業が行われます。

近隣の方々へのご挨拶

解体工事の前に、近隣の方々に挨拶をし、どのような工事を行うのか具体的に説明をしなければなりません。

工事中は騒音・振動が発生するほか、運搬車や重機の通行により共有の道路をふさいでしまうなど、近隣の方々に様々な負担を強いることになってしまいます。

どの家屋を・どのくらいの期間・何時から何時まで・どのような作業で工事を行うのかなど、近隣の方々が不安に思われないようきちんと説明をし、最低限ご迷惑をおかけしないよう配慮をする旨をお伝えし、ご理解を得なくてはいけないのです。

近隣の方々へのご挨拶の仕方は、こちらで詳しくご紹介しています。

お辞儀をする女性解体工事のその前に!失礼のない近隣挨拶とは

解体工事開始!施行の手順

さて、事前にするべき作業を終えたら早速解体工事開始です。木造家屋の取り壊しは、どのような手順で行われるのでしょうか?

ここからは、解体業者の作業を追って見ていきましょう。

足場・養生の設置

周りに足場が組まれた木造住宅

まずは重機などの機械の作業空間の確保のため、障害物の撤去・保護作業を行います。倒壊の危険のあるブロック塀等は解体し、残す場合は移設したり、防護をしておきます。

廃棄物の集積、積み込みの場所を確保できたら、足場と養生の設置を行います。

養生は騒音被害・粉塵の飛散被害の予防にもなるため、しっかりと外周を囲えるものを設置することが必要です。隣家との距離が遠い場合など、まれに養生を設置しなくてもよいケースもあります。

家屋内の残留物を撤去

家屋内にあった家具や生活必需品、ご自身の所有物などは全て事前に自分たちで処分しておくとして、業者による内装材の撤去作業が行われます。

ガラスや畳、蛍光灯などを慎重に分別しながら解体していきます。蛍光灯は水銀を、蛍光灯の安定器はPCBと言われるポリ塩化ビフェニエル化合物を含有しています。

破損すると周囲に飛散し、人体に影響を及ぼすおそれがありますので、注意して取り外し、運搬時には十分に防護しておきます。

手作業での内装材・屋根葺き材の撤去

転落に注意し、安全帯と命綱を使用して撤去作業を行います。屋根瓦とルーフィングと言われる屋根葺き用紙は廃棄方法が異なりますので、きちんと分別して解体します。

家屋内の石膏ボードの撤去、断熱材の撤去も手作業で行います。ボードや断熱材は粉塵となって飛散する恐れがありますので、作業員はマスクや保護メガネを使用しながら作業を行います。飛散が激しい場合には、散水を行うこともあります。

このとき、アスベストなどの有害物質を含有していた場合には確認し、写真を撮っておかなくてはなりません。有害物質の有無は作業工程に影響するため、解体工事の事前調査の段階で確認しておく必要があります。

いよいよ重機での解体開始

重機解体の様子

ここで、車両建設機械による解体作業が始まります!

重機を使用する際には近隣の安全を第一に考え、敷地内に立ち入り禁止処置を行い、通行人が多い場合は監視人や誘導人を配置します。近隣家屋を万が一にも損壊することのないよう、作業指揮者の指示のもと慎重に作業を行ってもらいましょう。

樹木の伐根

敷地内に生えている木の伐採も行います。
大きな木の場合には、手作業で倒す方向に切り口を入れ、重機で引っ張りながら切断するという方法が用いられます。

このような伐採された木もリサイクル資源になりますので、枝を落として切断したあと、運びだすまで大事に保管しておきます。

産業廃棄物を搬出

木材が積まれたトラックと作業員

重機による取り壊しを終え家屋を完全に崩したら、分別した産業廃棄物をトラックで運び出します。

リサイクル資源となる廃棄物と、処分する廃棄物の量により廃棄物処理費用は異なります。

資源の買い取り費用が処分費用を上回ることはほとんどありませんが、リサイクルできる資源が多かった場合には、廃棄物処理費用はその分安く済むのです。

土地を綺麗に整地

整地された更地

廃棄物を運び出したら、敷地内にはもう何もない状態。しかし、細かいゴミが残っていたり、地面が凸凹したりしていては、完全な更地とは言えません。

細かなゴミも処分して、重機を使用して地面を踏み固めていき、表面も綺麗に整地していきます。

更地にしたあとの活用法によって、土や砕石での敷均しや、人が立ち入らないようロープや看板を設置するなどの作業も行ってもらえます。

その後どのように活用するか決まっていない場合には更地のままで長期間放置することになってしまいますから、雑草が生え出してしまうこともあります。

そのため、除草剤を撒くなどの対策の作業も必要となります。

解体工事終了後の手順

解体工事が終わり、敷地も更地となりましたが、解体工事自体が終了したあとにもまだやるべきことは残っていますよ。

施工業者から完了の報告を受けたら、追加費用の有無などを確認し、現場の確認作業も業者と一緒にしっかりと行いましょう。

納得出来ない部分があれば話し合い、どのような過程があったのかを理解しなくてはなりません。トラブルが後を引かないよう、きっちりと解決しておきましょう。

周辺道路等の清掃作業

現場周辺の道路を清掃をする作業員

重機の使用や廃棄物の運搬などで、共有の道路や公共物を汚してしまっている可能性もあります。敷地内だけではなく、工事に使用した道路などもしっかりと清掃し、近隣の方々にも気持ちよく感じてもらえるようにします。

この作業を業者が行ってくれておらず、工事終了の連絡を受けて現場を見に行って唖然……というトラブルも少なくありません。近隣の方々から施主に直接クレームが来てしまい、施主自身が清掃を行ったというケースも。

家屋を壊したら終わり、という業者ではなく、最後まで誠実に作業を行ってくれる業者を選択することが大切ですね。

地鎮祭

工事前の地鎮祭の様子

土地を更地にしたあとは地鎮祭を行ないます。

地鎮祭は土地に宿る神様を鎮めこれまでのお礼をするという意味で行いますので、絶対にやらなくてはならないことではありませんが、古くから続けられている儀式ですのでやっておいた方が精神的な面で今後の役に立つかもしれません。

ご自身がやる必要性を感じなくても、ご家族の方々の気持ちを尊重してやるやらないを決定した方が良いでしょう。

地鎮祭は一般的にお米やお酒をお供えし、神主さんを招いてお祓いをしてもらいます。

流派やその神社によって費用や時間も異なりますので、ご家族に相談したり、近所の神社に相談に行くのも良いでしょう。

新築を建てる場合には不動産業者や、ハウスメーカーに相談すれば手配してくれるということもあります。

近隣の方々へ工事完了のご挨拶

解体工事の前にもご挨拶はしていますが、解体工事が終了したというご挨拶をすることも大切です。この時のポイントとして、施工業者に料金を支払う前に行うことが大切です。

なぜ支払い前にしたほうがよいのかというと、近隣の方々が何かしらの被害を被っていないかどうかの確認作業が必要だからです。

完全に支払いを済ませてしまっていたら、その後の対応をしてもらえず、もう終わった案件として無視されてしまうかもしれません。

工事中に何か困ったことはなかったか、家屋に何か被害があったりはしなかったかなど、完了の報告と共に確認しておきましょう。

工事中業者に伝えられなかったけれど……という小さなトラブルがあるかもしれません。近隣の方々との今後の関係のためにも、お互いの心配事はなくしておきましょう!

木造住宅の解体工事の手順についてのまとめ

家屋を撤去する前に、どのような手順で、どのような作業によって工事が行われるのか把握しておくことはとても大切です。

例えば土地が凸凹した状態のまま完了報告を受け、整地を行ってもらうのが一般的だと知らず、ご自身で整地作業を行ったという人もいます。

業者がすべき作業を知らなかったばかりに、悪徳な業者だと見抜くことができなかった……というのは残念ですよね。

取り壊し工事を行う前に、大切な家屋がどのように撤去されていくのか覚えておきましょう。

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